研究課題/領域番号 |
24300047
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
桑原 教彰 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (60395168)
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研究分担者 |
田村 俊世 大阪電気通信大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10142259)
米澤 朋子 関西大学, 総合情報学部, 准教授 (90395161)
成本 迅 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30347463)
山添 大丈 大阪大学, 国際公共政策研究科, 助教 (70418523)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メディア工学 / 認知症ケア |
研究概要 |
視聴覚,触覚刺激のクロスモーダル提示について,より視覚刺激をリアルにした場合の効果の検証のため,映像合成でなくあらかじめ用意した実際の映像を用いて評価を実施した.しかし映像をリアルにすることの効果よりも触覚刺激のリアルさのほうが,寄り添い感の生成には寄与が高いことが示唆される結果となった. 装着型のぬいぐるみロボットに対する愛着やユーザの動作のしやすさなど検証を,停止時・歩行時において行った結果について査読付き国際会議で研究発表した.現在論文誌の投稿準備中である.また,生物存在感の提示および親密な距離感の伝達に効果的と考えられる,発声に伴う呼吸を模した風を用いた擬人化手法をぬいぐるみロボットに実装し,査読付き国際会議で研究発表した. 実証実験に向けたぬいぐるみロボットのデザインについて検討し,小型・軽量で 装着しやすいぬいぐるみロボットの実装を行った.これらのデザイン・実装については,査読付き国際会議や国内会議にて発表を行った. 認知症患者の精神症状の背景にある脳の異常を同定するために,MRIや脳血流SPECT検査を用いて検討を行った.結果として興奮には右側頭葉,前頭葉が,妄想には右頭頂葉と後頭葉の血流低下が関与していること,せん妄にはMRIで評価した大脳白質の変化が関与していることなどが明らかとなった. 注意機能として視覚刺激により,方向を決定するときの脳の活動をf-MRIで観察した.道案内には矢印やイラスト,文字などが用いられているので、方向判断時の脳活動についてこれらを用いた時の脳機能,反応時間,正答率を比較,検討した.その結果,各刺激について違いがみられ、反応時間は,矢印,イラスト,漢字の順に速く,正答率は,イラスト,矢印,漢字の順に高かった.漢字は他の刺激より左右の判断が難しく,より高次のプロセスが必要であるため,時間を要することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度中に触覚刺激提示用のぬいぐるみロボットのデザインについて検討し,小型・軽量で 装着しやすいぬいぐるみロボットの実装を行ったこと,また生物存在感の提示および親密な距離感の伝達に効果的と考えられる,発声に伴う呼吸を模した風を用いた擬人化手法をぬいぐるみロボットに実装したことにより,クロスモーダルな刺激提示の実現で最も重要なパーツが完成したことから,最終年度である平成26年度には研究協力先のグループホームなどで寄りそい感の生成効果などを検証する準備が整った. 実証評価においては,個人差が大きい高齢認知症者の特性を理解するための脳血流量などの結果が得られたことから,実験協力者の適切なリクルートが可能になったことも重要な成果である.
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今後の研究の推進方策 |
まずは実証評価実験のフィールドである介護施設,グループホームなどの協力を得て,触覚刺激提示としてぬいぐるみロボットが実験協力者の候補者である認知症者に受容されるかどうかの検証を実施する.検証結果をデザインにフィードバックした後,ぬいぐるみロボットを実験協力者が装着することによる行動変容が現れるかを検証する.検証に際しては,まずはぬいぐるみロボットのビヘイビアの有無,それと連動したぬいぐるみロボットからの聴覚刺激の提示の有無の条件などを組み合わせて実施する. さらに実験協力者が無気力状態に陥った場合に,ぬいぐるみロボットによる上記の介入のみの場合と,ディスプレイなどからの視覚刺激を組み合わせた場合で比較し,寄り添い感の効果を検証する. さらに認知機能が健常な高齢者,あるいは軽度の認知症者で脳活動の計測について理解できる実験協力者については,NIRS,fMRIなどを利用した脳活動計測により,寄り添い感の生成機序についての検討も行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者の投稿論文の印刷費用に計上していた分が,論文が採録されなかったことにより支出できなかったことによる. 論文を修正して再投稿して採録をめざし,印刷費用として支出する.
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