本年度は、昨年度積み残しとなった、日本語辞書のためのfull-sentence definition (FSD)形式の定義文の研究を実施した。 1.これまで作業が遅れていた名詞に対する辞書記述を設計した。名詞の定義においては、事態性、階層性、指示対象性を利用することとし、大きな区分として、サ変名詞、動詞由来の名詞、階層で示す名詞、形容詞的な名詞、それ以外の一般的な名詞を採用し、一般名詞以外のそれぞれタイプの名詞の辞書定義文の記述方式を定めた。サ変名詞に関しては、動詞形(「~する」)と名詞形を提示する。動詞形に対しては、どのような項をとるかがわかるような形で定義する。動詞由来の名詞についても、動詞と項の関係が明確になる形で定義する。階層で示す名詞とは、上位・下位概念を用いて定義することができる名詞である。形容詞的な名詞は、ナ形容詞と同じような形式の定義文を用いることとした。 2.名詞以外の品詞に対しても、辞書定義文の記述形式の統制を進め、最終的に、辞書項目サンプル160語に対してその定義を完成させた。 3.これと並行する形で、定義文の書き方に関するルールとガイドラインを定め、それらを、「FSDを採用した新しい日本語辞書作成マニュアル」としてまとめた。このマニュアルでは、FSD形式の基本ルールと各種記号の使い方を説明するとともに、それぞれの品詞毎に、見出し語の立て方、ターゲットの設定方法、定義文の作成方法(どのような情報を盛り込むか、どのような文型を用いるか)を示した。
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