本研究は,独自の生物着想型のセンシング原理とデバイス・アルゴリズムに基づき,現在のイメージセンサと画像処理アルゴリズムからは量的にも質的に異なる高い情報抽出能力と統合的知覚機能を有する視覚システムの実現を目指したものである。最終年度の平成26年度において,以下の具体的成果が得られた。 1) 固視微動の数学的定式化により導かれた一般化オプティカルフロー偏微分方程式において,いくつかの具体的条件における応用について検討し,視点の円振動により発生する画像の円運動の半径を求め,それを視線方向の距離に変換する厳密アルゴリズムが得られた。 2) これをロンボイドプリズムによる視点の円振動光学系と時間相関イメージセンサによる実時間撮像系に適用し,円振動眼ステレオ法の実験システムを構築した。 3) このシステムは,構造化照明などを必要としない受動ステレオ法であること,対応探索を必要とせず単一フレーム画像の明度分布から直接代数的に距離画像が生成されること,全方向の視差情報が利用され全面で高密度な距離画像が求まること,カメラのキャリブレーションの問題からほぼ無縁となることなど,今後非常に優れた三次元計測方法として発展することが期待される。
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