研究概要 |
エネルギー最小化は領域分割,ノイズ除去,ステレオなどの多種の問題において画像処理やコンピュータビジョンにおける標準的な手法となった.中でも最も一般的になったグラフカットは,最小切断アルゴリズムによる1階2値劣モジュラエネルギーの大域最小化を基本に,より困難なエネルギー最小化を目指して活発に研究されている.特に,非劣モジュラ,多値,高階のいずれかの性質を持つエネルギーの最小化のために様々な工夫がされてきた.本研究では今年度、劣モジュラでない2値エネルギーを近似的に最小化する方法として最近多用されるようになってきているQPBOアルゴリズムの多値版を与え,移動アルゴリズムのような繰り返しによらないで劣モジュラでない多値エネルギーを最小化するアルゴリズムを実現した.そのために,QPBOアルゴリズムの理論的基礎であるルーフ双対性の概念を3元以上のラベル集合が線形順序を持つ場合に拡張し、持続性(persistency)という性質が,線形順序を持つ多値の場合にも任意階で成り立つことを示した.これを基礎に,2値の場合と同様に,与えられたエネルギーの最小値の下界を最小値として与える劣モジュラ関数(劣モジュラ緩和関数)を構成し,それを代わりに最小化する方法を開発した.1階の場合にはこの劣モジュラ緩和関数のうち最小値が最大のもの(最適劣モジュラ緩和関数)が具体的に構成できることを示し,それにより劣モジュラでない多値エネルギーを部分的に最小化するQPBOの多値版ともいうべきアルゴリズムを与えた.
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