研究課題/領域番号 |
24300085
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
篠森 敬三 高知工科大学, 工学部, 教授 (60299378)
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研究分担者 |
中内 茂樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00252320)
繁桝 博昭 高知工科大学, 工学部, 准教授 (90447855)
門田 宏 高知工科大学, 総合研究所, 講師 (00415366)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色覚異常 / 老化 / 感性情報学 / 色覚 / ユーザーインターフェース / 実験系心理学 |
研究概要 |
平成25年度は,「実験① 高齢者における色弁別特性と色命名の測定を行う」に関連し,色弁別特性の一種である背景からの短時間輝度変化閾値を測定した。研究代表者先行研究の輝度増分インパルス応答加齢効果だけではなく,輝度減分(OFF)の加齢効果についても計測した結果は,前年度測定の等輝度青・黄変化刺激の場合と異なり,輝度増分と減分の処理速度は加齢に寄らず安定していた。また閾値は年齢と共に増大するが,同一被験者では増分と減分でほぼ同じであった。さらに色命名測定として,中間的な色カテゴリーの測定を若年者で行った結果,中間色でも訓練次第で安定的な色カテゴリーが維持されることが明らかとなった。 「実験② 高齢者の色の見えシミュレーションを行う」ための前段階として若年者で色恒常性を調べたところ,被験者の色恒常性による補正は,照明色光の色の影響を受けて変化するという結果となった。また高齢者・2色覚模擬眼鏡をかけた時の色命名測定をさらに行うとともに,高齢者における色弁別についての招待講演を行った。 「実験④ 2色覚者や高齢者における誘目性の測定」について,日常に即した課題として浴室における手すり色の誘目性として定義し,手すり色への反応速度及び一対比較によるより目立つ色の計測を高齢者で実施した。その結果,オレンジ・赤系統の色の誘目性が高かったが,オレンジ系統は照明色を白熱球色にした場合に極端に誘目性が低下する一方,赤系統は安定的に高い誘目性を維持することが明らかとなった。さらに「実験⑤ fMRI計測により誘目性の直接的測定」を一般被験者に対して刺激の彩度変化の脳内賦活測定として実施したところ,V4等の色処理部位における予想された反応の他に,言語野等の賦活が見られ,色を色名等で判断していることの影響を示唆する結果となった。 現在は,上記結果について論文にまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に掲げた(目標1)「加齢による見えの変化をシミュレーションによって可視化する」に関して,上記「実験① 高齢者における色弁別特性と色命名の測定」が順調に進行し,「実験② 高齢者の色の見えシミュレーション」ための前段階である若年者による色恒常性実験と,高齢者模擬眼鏡による色名測定が終了している。また(目標2)「安全な色を誘目性の観点から求める」に関して「実験④ 2色覚者や高齢者における誘目性の測定」について,高齢者について手すり色を題材とした誘目性実験が終了している。また「実験⑤ fMRI による誘目性の直接的測定」を彩度を題材として一般被験者に対して行っている。 このように実験や計測については予想以上に研究が進捗している一方で,それら成果についての論文による成果公表がまだ終了していないことから,全体として「② おおむね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,平成25年度に得られた知見(「成果の概要」参照)に基づいて,以下のように研究を推進していくことを計画している。 「現在までの達成度」記載の(目標1)に関して,「実験① 高齢者における色弁別特性と色命名の測定」について,色弁別特性計測は終了しており,平成26年度に,高齢者の色弁別特性とそのモデルについての論文を作成する。また色弁別特性の一種である等輝度短時間色変化を測定する「実験①a インパルス色刺激として色変化に対する感度を色インパルス応答関数として測定」を改良実験として企画しており,平成26年度より「実験①a4 赤緑インパルス色インパルス応答関数の測定」を実施する。また「実験② 高齢者の色の見えシミュレーションを行う」ための前段階として平成25年度までで若年者での色恒常性を計測したが,これを論文化するとともに,「実験①b2 色恒常性の加齢による影響を調べる」実験に進展させて実施する。 (目標2)に関しては,平成26年度より新しく「実験④の2 2色覚者における誘目性の測定」を実施する。そのための2色覚者判定のためアノマロスコープを導入する。さらに「実験⑤ fMRI による誘目性の直接的測定」に関連して彩度の脳内処理の計測を一般被験者に対して行った結果を論文にするとともに,より脳内メカニズムが明らかになるように刺激を改良し追加の「実験⑤の2」を実施する。 さらに,(目標3) 「2色覚者や高齢者における色に対する感性評価を調べる」のために,「実験⑥ 色の感性評価実験(直接的評価と印象評価)」を実施するとともに,さらに「実験⑦ 脳計測による色の感性評価予測を行ってその精度を検証」する。 これらの実験・計測を実施することにより,本研究全体を推進することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた状況については,(1)実験において計測データが良好であり,パイロット実験のために予備的に確保してあった実験被験者謝金の一部が未使用となったこと,(2)研究分担者作成の実験装置(豊橋技術科学大学)が予想よりも低価格で作成できたこと,(3)論文の出版が年度内に行えなかったため論文投稿料相当額が繰り越されたこと,(4)研究分担者のfMRI実験とデータ解析についての研修出張が1件不要となったこと, によるものである。 これらについて,(1)については,新規実験を平成26年度にも多数行うため,パイロット実験のための被験者謝金が必要と考えられること,(2)については,実験装置の運用に伴って必要な装置の強化や改造の費用が必要であると予想されていること,(3)論文の出版が行われれば論文投稿料が必要となること,(4)新しい研究分担者のためにfMRI実験とデータ解析についての研修出張が必要と考えられること,から平成26年度においてこれらへの使用を計画している。
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