研究課題/領域番号 |
24300094
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小島 浩之 東京大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (70334224)
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研究分担者 |
上田 修一 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (50134218)
佐野 千絵 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存修復科学センター, 保存科学研究室長 (40215885)
安形 麻里 慶應義塾大学, 文学部, 准教授 (70433729)
矢野 正隆 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特任助教 (80447375)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 情報図書館学 / 保存科学 / 資料保存 / マイクロフィルム / ビネガーシンドローム / 訪問調査 / 質問紙調査 |
研究概要 |
平成24年度は研究初年度にあたるため、公的統計のほとんどないマイクロフィルムの全体的な状況を数値として把握することを最大の目標とした。このため保存現場の実態を把握する訪問調査と郵送による質問紙調査を実施した。訪問調査は創立の古い機関の多い首都圏と、自然環境が厳しい沖縄地区、北陸地区を中心に、メンバーで手分けして全国21機関で実施した。この調査からは、保存環境と劣化には相関関係が見られること、情報提供の少なさからか誤った劣化対策が講じられている場合もあること、既存のマニュアル類に無い劣化が見過ごされていることなどが明らかとなった。 訪問調査の結果を精査して質問項目を立案し、対象を国立国会図書館、四年制の大学図書館、大学院大学図書館、都道府県立図書館に絞って質問紙による悉皆調査を実施した。対象は1,437館で、有効回答は902件(回収率63%)であった。この調査および予備調査4館の結果の分析からは、回答館の5割強がマイクロ資料を所蔵しており、マイクロフィルムを長期保存の媒体として位置づけていた。劣化については、ビネガーシンドロームの発生は4割、なかでも国立国会図書館と都道府県立図書館は7割の高率でビネガーシンドロームが発生していた。しかしその一方で、24時間空調管理が可能な図書館は3割、湿度設定まで可能な図書館は2割であり、劣化が進んでいるにもかかわらず、根治療法である環境改善が進んでいない実情も明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度実施した訪問調査と質問紙調査により、研究目的に掲げた4点のうち、第1点目の「日本におけるマイクロフィルム保管状況の情報集約と現状分析」については目的を達成できたことに加え、第2点目の「マイクロフィルムの劣化・異常現象の実態調査と分析」についても、同調査により「実態」について研究チームとしてほぼ把握できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査結果の分析を進めるとともに、この調査に基づいて追加の各種科学的調査を実施する。これらから得られた知見は学術的な公表はもちろんであるが、シンポジウムや公開講座、フィルム保存のためのパンフレット類を作成配布するなど社会的啓発を含む社会還元をも視野に入れる。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査地を遠方に設定したため日程調整が難しく参加できない分担者等が出たこと、質問紙調査の回答の半数がWebによる回答を選択し通信費が抑えられたことにより余剰が生じた。これについては次年度の訪問調査のための旅費、および報告書や保存機関への配布物を印刷する費用等に充当する予定である。
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