本研究では、近交系もしくは異系交配マウスの行動解析を用いたマウス認知機能関連遺伝子の同定、IQ不一致一卵性双生児を用いた認知機能関連遺伝子の同定を行い、また精神遅滞の原因遺伝子の同定、サルとヒトで発現の異なる言語遺伝子の同定、認知機能関連遺伝子として同定された遺伝子の産物の機能解析を行うことで、知能発現の分子メカニズムの解明、環境因子との関係の解明、精神遅滞における原因遺伝子同定、病態解析と治療法開発を目指している。本年度は、以下について検討を行ってきた。 1.近交系マウスの行動解析による得点化と遺伝子発現・DNAメチル化解析:マウスの行動解析とマウス脳由来RNAを用いた遺伝子発現マイクロアレイ解析のデータの関連を調べてきた。次世代シークエンサーを用いたDNAメチル化解析を進めている。2.異系交配マウスの行動解析による得点化とQTL連鎖解析:賢さの判定が研究者により曖昧であり、独自のデータが必要であることがわかった。3.IQの差が顕著な一卵性双生児を用いた遺伝子発現・DNAメチル化解析:以前同定したDNAメチル化に差の見られた遺伝子について、トランスジェニックマウスを作製する準備を開始した。4.精神遅滞の原因遺伝子の同定:新規の原因遺伝子候補について詳細に解析したが、未だ確証は得ていない。他の原因未知の患者について次世代シークエンサーを用いたターゲットシークエンスを行っており、新たな遺伝子変異候補を同定した。5.サルとヒトの脳の遺伝子発現解析:次世代シーケンサーを用いた発現解析が適当と考え、条件検討を開始した。6.同定された遺伝子の機能解析と分子ネットワークの構築:本研究1.で同定した上位関連遺伝子には、既知の認知機能関連遺伝子、精神遅滞、自閉症、パーキンソン病とアルツハイマー型認知症の関連候補遺伝子が有意に多く含まれていることがわかった。
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