研究概要 |
高頻度データに基づく確率微分方程式モデルのドリフトとボラティリティパラメータの適応的推測手法の改良およびそれから得られる3種類の適応的最尤型推定量や適応的ベイズ推定量の漸近分布・積率収束などの漸近的性質を証明した.適応的ベイズ型推定法は次のような手順で行う:まずパラメータ空間をドリフトパラメータ空間とボラティリティパラメータ空間に分離して,ボラティリティパラメータに関する簡易な効用関数を用いて,初期ベイズ型ボラティリティ推定量を導出する.それを近似精度を上げた効用関数に代入して,ベイズ型ドリフト推定量を求める.そのベイズ型ドリフト推定量を,さらに高精度な効川関数に代入して,ベイズ型ボラテリティ推定量をアップデートする.それらを交互に(データ数と刻み幅に依存した)必要回数だけ繰り返すことにより,適応的ベイズ型推定量の精度が向上し,最終的には積率収束性を有する漸近有効なベイズ型推定量が導出できることを証明した.本研究の意義は,数値計算が困難な同時ベイズ型推定黛の欠点を解消する適応的ベイズ型推定法の開発に成功しただけでなく,その積率収束性などの漸近的性質を緩い正則条件の下で証明したことである. 夜間・昼休みの経済高頻度データへの影響を加味したボラティリティの推定手法を定式化し,実証分析でその安定性を示した.高頻度観測の下で,Normalinverse Gaussianl過程の尤度の局所漸近正規性を導出した.また,確率過程の自己規格化残差系列の漸近挙動を導出し,適合度検定への応用を提案した. 高頻度不規則に観測される連続セミマルチンゲールデータから,ドリフトの回帰係数を推定する問題を考察した.連続観測の場合の最尤推定量を自然に離散化して構成できる推定量は局所ガウス近似に基づく疑似最尤推定量と一致するが,この推定量は観測の不規則性の下で一次の漸近バイアスを持つことを示した.説明変数となる確率過程の増分の歪度推定凪を用いて回帰のバイアス補正を構成した.
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