研究概要 |
個人ゲノムが漏洩し,保有者が特定されると,個人情報が漏洩します.リスクの評価法はありませんが,その有用性から,将来的に問題になる喫緊の課題です.個票開示リスクと相似で,個人ゲノムの情報をどのように秘匿処理すれば標本一意の秘匿済み個人ゲノムが母集団一意になる確率を抑えられるかが問題です.代表者は,ゲノムデータに現われる確率分割の研究に携わってきました-本研究は,その成果を応用し,個人ゲノム決定における情報科学の指導的役割を果たしてきた分担者と共に,リスク評価と秘匿の方法を確立することを目的としています.一年目は,個人ゲノムデータの実態を理解するための準備として,標本を適切に表現する確率分割の理論的検討を行いました,その結果として,2件の成果が得られ,1件については論文が掲載され,もう1件については,学会や研究集会で合計4件の発表を行い,直近に論文を投稿する予定です.1件目は,ゲノムの多様性の位置ごとの間の相関構造を考慮した確率分割についての検討ですが,J.Appl.Probab.50:256-271に掲載されました,確率分割をある種の拡散過程の定常分布からの標本抽出として導出できますが,ここでは,相関構造を表現した拡散過程の双対をなす標本が従う格子上の確率過程について考察しました.その意義はいろいろありますが,この論文では,確率分割に相当するモーメントの数値計算を,拡散過程をシミュレートするのではなく,シミュレートの容易な双対な過程のMCMCによる抽出により行うことを提案しました.2件目は,確率分割として最も標準的なPitman分割について,その漸近的な挙動を調べました.Pitman分割は2母数Poisson-Dirichlet分布からの標本抽出ですので,標本サイズのオーダーでの分布として漸近的に2母数Poisson-Dirichlet分布に従うことは明らかです.この論文では,解析的組み合わせ論の技術を用いて,それより小さいオーダーでの漸近的な挙動も含めて調べました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論的検討に関しては,論文を1編出版し,もう1編を近く査読付き雑誌に投稿する予定ですので,おおむね順調と思いますが,まだデータ解析に着手していませんので,総合するとやや遅れていると思います.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は理論的検討を重点的に行ったために,データ解析に関する進捗がありませんでした.平成25年度は個人ゲノムデータの実態の把握し,データ解析を進める予定ですが,その対応策として,分担者を1名追加するとともに,博士研究員2名にご協力を頂くことにしました.
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