研究課題
平成25年度は空間の離散化に関し、有限差分法を用いた空間モデルシミュレータのプロトタイプを実装し、拡散方程式、移流方程式の精度の検証を行った。空間の離散化に関して検討を行った結果、有限差分法ではなく有限体積法を採用することを決定し、実装を行った。また移流方程式の精度向上のため、一般的に使用される風上差分法ではなく、CIP(Cubic-Interpolated Pseudoparticle)法を採用した実装を行った。時間積分に関しては4次のルンゲ・クッタ法の数値積分アルゴリズムを実装した。十分な精度が確認された後、数値積分の細粒度並列化を行った。昨年度行った試験的実装では分子の拡散現象のみを並列化することによりCPUでの実装と比較して約4.5倍の高速化を達成していたが、今年度の実装により拡散方程式は20倍程度、移流方程式は15倍程度、反応方程式は10倍程度の高速化を達成した。また、動作検証に用いる空間モデルの形状を単純な円や長方形だけではなく、実際の細胞画像からの形状取得を行うため、培養細胞を用いた実験を行い、蛍光色素による染色後、顕微鏡画像から細胞の形状抽出を行った。現在、2次元の細胞形状(顕微鏡画像)をシミュレーション空間に変換するアルゴリズムの開発を開始している。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の今年度の予定では計算精度の検証後に数値積分の並列化を開始することを計画していたが、今年度内に拡散方程式、移流方程式、反応方程式の細粒度並列化のプロトタイプ実装が完了し、拡散方程式に関しては逐次型のCPU実装と比較して約20倍の高速化を達成した。また、実際の細胞画像から形状取得を行い、シミュレーション空間として利用する計画に関しても順調に進んでいる。
計算精度に関しては今年度の実績から十分な精度が得られることを確認しているため、今後は拡散方程式、反応方程式、移流方程式のGPU上での高速化に注力する。平成26年度は開発用コンピュータを購入し、開発効率の向上を行う。また、シミュレータの動作検証に用いる空間モデルは形状として単純な円や長方形だけではなく、実際の細胞画像からの形状取得を行うため、培養細胞を用いた実験を行い、蛍光色素による染色後、顕微鏡画像から細胞の形状抽出を行う。形状抽出には当研究室で開発が進められている画像解析アルゴリズムを採用し、細胞膜、核などの形状を抽出する。
当該年度にてシミュレータの実装を進める際に、シミュレータの精度検証、及び性能評価を行うために高速な計算機環境を用意することを想定していたが、並列化のプロトタイプ実装が予想を超えるペースで進み、前年度の実装と比較して約5倍高速化し精度検証、性能評価が短時間で完了することとなり、計算機環境の購入を次年度に持ち越すことにしたため。当研究課題にてシミュレータの動作環境として想定しているGPUはNVIDIA社のTesla M2090であるが、昨年NVIDIA社より新規アーキテクチャのGPUであるTesla K40が発表された。Tesla K40はTesla M2090より高性能である反面、高価なGPUである。次年度にはより高速なGPUであるTesla K40を購入し、当研究課題で開発を進めている高速空間モデルシミュレータをTesla K40上で動作させ、評価を行う計画である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
BMC Systems Biology
巻: 7 ページ: 5
10.1186/1752-0509-7-55