研究課題/領域番号 |
24300115
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
平田 豊 中部大学, 工学部, 教授 (30329669)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 運動学習 / 眼球運動 / 小脳 / モデル / BMI / 適応制御 / ロボット |
研究実績の概要 |
本研究では,生体特有の適応運動制御機構を工学的に実現することを目指し,生体運動制御の脳内メカニズムを探り,得られた治験をロボットや医療機器等の実機制御に応用することを目的とする. 本年度は,これまでに得られた神経生理学的知見ならびに行動実験の結果をもとに,小脳・脳幹型コントローラを構築し,実機制御に応用してその有効性を評価した. ここでは,実時間で動作する小脳・脳幹神経回路モデルを計算機上に実装し,直流モーター,二輪倒立ロボットやクアドコプタなどの実機制御を行い,その有効性を実証した. また,これらの実機制御実験を通し,小脳・脳幹神経回路による適応制御の神経機構に関する興味深い知見を得た.具体的には,我々の脳内に最も多く存在する小脳顆粒細胞の数をコントローラ内で変更し,実機適応制御における性能を評価した結果,小脳顆粒細胞数が多いほど,コントローラ内のシナプス荷重の初期値が実機制御精度に与える影響が小さくなることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳で実現される適応運動制御機構を理解し,ロボットや医療機器等に用いられる実機モータ制御に応用するという本研究の目的において,今年度の具体的な研究実施計画項目は, ①小脳―脳幹型コントローラの構築,②小脳・脳幹BMIによるロボット制御, であった.①に関しては順調に進んでおり,今日までに2本の学術論文としてまとめ,公表している(「研究実績の概要」参照).②に関しては,小脳の出力細胞であるPurkinje細胞の単一神経活動によりロボットアームの適応制御に成功し,1本の学術論文としてまとめ,公表している(この論文は,電子情報通信学会の論文賞を受賞した).また,国内外の学会やセミナー,シンポジウムにおいて発表・報告している.②における脳幹premotor細胞によるBMIについては,これを安定して実施するための装置の整備と実験技術の向上に努めている.これらの状況から,「研究の目的」の達成度については,おおむね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の実施期間は残り1年でる.最終年度は以下の推進方策で研究成果の最大化を図る.
基本的には当初の計画通り,平成26年度と同一の内容(「現在までの達成度」に示した①と②)の実験・解析を進める.特に,小脳・脳幹BMIの実験系を整え,前庭動眼反射(VOR)適応パラダイムの他,眼球運動中枢積分器(ONI)の適応パラダイムを利用したBMIによる実機適応制御を実現する.
また,これまでの研究成果を国内外の学会研究会やシンポジウムにおいて発表し,関連分野の研究者と議論・意見交換を重ね,学術論文としてまとめて学術雑誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
魚類BMI用実験系の見直しによる小型装置の未購入
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次年度使用額の使用計画 |
見直した実験系で必要となることが確定した小型機器から順次購入
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