研究概要 |
シナプスで起った可塑的変化を長い期間にわたり保持・持続するためには、活動依存的な新規遺伝子発現が必須である。しかし誘導された遺伝子産物がいかにして、当初入力を受けたシナプスにおける活動の制御を担うのか、そのメカニズムは未解明のままである。本研究提案では、この、核からシナプスへのシグナリングによるシナプス調節機構の分子基盤を解き明かすため、神経特異的前初期遺伝子Arcに焦点を当て、ArcタンパクのシナプスへのターゲティングならびにArcによるシナプス制御機構を明らかにする。 平成24年においては当初計画に従って研究を進め、以下の成果を得た。成果1.Arcタンパクが不活性化シナプスに集積する機構およびGluA1のエンドサイトーシス機構の解析からArcとCaMKIIβ複合体による逆シナプスタグという新しい仮説を提唱した(Okuno et al., Cell, 2012)。成果2.Arcの活動依存的転写調節エンハンサーであるSAREを介した遺伝子発現の解析をすすめ、これまで知られている転写因子CREB,SRF,MEF2に加えて、これらに結合する数種類のコアクチベーターもArcの発現調節に重要な役割を果たしているという知見を得た。成果3.Arcと共発現する活動依存的遺伝子群の解析を行うための実験系構築および改良を行い、遺伝子発現が活性化した細胞群から転写産物を抽出してRT-PCRによる系の評価を行った。
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