研究課題/領域番号 |
24300120
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐藤 純 金沢大学, 脳・肝インターフェースメディシン研究センター, 教授 (30345235)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 動体認識 / 視覚情報処理 / ショウジョウバエ / 視覚中枢 |
研究実績の概要 |
動体認識は多くの動物において見られる基本的な視覚情報処理であるが、特定の動き成分を抽出する動体認識回路の実体は不明な点が多く、神経科学における重要な課題である。動体認識回路の動作機構は進化的に保存されており、ショウジョウバエは優れたモデル系だと考えられているが、ハエを用いた動体認識の研究はほとんど進んでいなかった。ハエの神経遺伝学的ツールと行動実験を組み合わせることにより、動体認識回路の実体および動作機構を明らかにする。 これまで、ハエの飛翔行動をビデオ撮影し画像解析することによって行動実験のデータを得ていた。しかし、この方法は非常に効率が悪く、大量の行動実験データを解析するには適していない。また、視覚刺激と画像データのタイミングを同期することが非常に困難であることがわかった。そこで、ビデオの代わりに赤外線センサーを用いて翅の動きをリアルタイムに解析する実験装置を構築した。これにより、動体認識に関与する神経細胞の活動を阻害したハエにおける行動異常を迅速に解析することができるようになった。 公共のデータベースからゲノム上の様々なエンハンサー断片の発現パターンを解析し、これらDNA断片の制御下で特定の神経細胞の活動を操作する系統を作製した。これによって、L1, Mi1, Lawf2など動体認識に関与すると考えられている神経細胞の神経活動を特異的に操作するための実験基盤が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験装置を再設計する必要が生じたが、新しい実験装置は予定どおりにセットアップでき、順調に稼働している。また、それと同時にトランスジェニック系統の作製も順調に進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
新しい実験装置と新しいトランスジェニック系統を組み合わせ、視覚情報処理に関与する神経細胞の神経活動を阻害した時の行動異常を定量的に解析する。行動実験のパラダイムはコンピュータープログラムによって自由に設計できるので、動体認識に関与する様々な実験系を考案し、様々な実験データを解析する。また、視覚情報処理はON経路とOFF経路から成ると言われているが、現時点ではそのうちON経路に関わる神経細胞特異的に発現するトランスジェニック系統が作製されている。今後はON経路とOFF経路の相互作用に着目する可能性が高いので、OFF経路を構成する神経細胞特異的に発現するトランスジェニック系統の作製に取り組む。また、青色LEDを用いた行動実験装置を用いてカルシウムイメージングの系を立ち上げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年7月に行った条件検討の結果、当初の実験装置では視覚刺激と得られる画像データのタイミングを同期することができないことが判明した。赤外線センサーによるリアルタイムなデータ取得を導入し、視覚刺激とデータを同期できる実験装置を再設計し、12月に完成させた。平成26年1月より新しい実験装置による条件検討を行っている。次年度はこのあたらしいシステムを用いて大量のデータを取得し、データ解析を行うため博士研究員を雇用する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年4月より新しい実験装置を用いたデータ収集を開始する。大量のデータを収集し、データ解析を行うための博士研究員を雇用する。得られたデータをもとに、研究成果を取りまとめる予定である。
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