研究課題/領域番号 |
24300122
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
岡野 ジェイムス洋尚 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90338020)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | RNA結合タンパク質 / ALS / TDP-43 |
研究概要 |
TDP-43はALSの原因遺伝子の一つと考えられており、何らかの原因でTDP-43の細胞内レベルを制御する機構が破綻することがあるなら、ALS発症の基点となりうると予測される。本研究計画は、ニューロンにおいて細胞内TDP-43レベルを決定する翻訳調節メカニズムの解明を目指すとともに、その制御システムの破綻がALS発症のリスクとなり得るのかを検証することを目的としている。ALSマウス(G348C、A382T変異型TDP-43/Venusノックインヘテロマウス)の脊髄運動ニューロンにおけるTDP-43発現は、正常マウスと比較して週齢とともに増加傾向にあり、特に脊髄前角運動ニューロンにおいて発現が顕著に高かった。脊髄組織由来RNAを用いてAlternative Splicing Microarray解析による網羅的検索を行ったところ、複数の遺伝子の選択的スプライシングパターンに異常があることがわかった。週齢の異なる複数の個体を用いてRT-PCR法により確認作業を開始した。また、ALS患者脊髄に見られるparaspeckleにTDP-43のみならずlong non-coding RNAであるNEAT1 2が含まれ、NEAT1 2がscaffoldとしてparaspeckleの形成に寄与していることを示した(Nishimoto et al. Mol Brain 2013)。一方、行動解析によりALSモデルマウスの脳高次機能を検討したところ、両マウスとも野生型と比較して有意に衝動性が高く、不安感が低いことがわかった。同マウスの異常が、変異型TDP-43と関連する前頭側頭葉変性症の形質の一部を反映する可能性があることが示唆された。ALSモデルマウスが前頭側頭葉変性症のモデルとしても有用であると判断し、特許出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
25年度の研究結果により、脊髄組織由来RNAにおいて複数の遺伝子の選択的スプライシングパターンに異常があることが示されたとともに、ALS患者脊髄に見られるparaspeckleの形成機序の一端が明らかなった。また、ALSモデルマウスが前頭側頭葉変性症のモデルとしても有用であることを示した。これらのデータをもとに、26年度以降の研究計画では大きな進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
ALS発症の機序ついてより詳細に調べるため、 ① HuC KOマウス脊髄におけるスプライシング異常の検出およびALSの進行との関連性を検討する。②ALSモデルマウス末梢血単核球における遺伝子発現・スプライシング異常の検出と、ALS発症に関連するバイオマーカーとしての有用性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に使用している遺伝子改変ALSモデルマウスは、発症までに10ヶ月以上の時間がかかるため、研究発表に必要な各月齢の個体数を確保するために平成26年度まで待たなくてはならなかった。平成26年度に費用のかかる多くの解析を計画しているため、平成25年度の一部の直接経費を次年度使用の経費とした。 分子生物学的実験のための試薬、細胞培養試薬、免疫組織化学試薬に使用するとともに、研究成果発表のための学会参加費用(旅費含む)にあてる。
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