研究課題/領域番号 |
24300125
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
磯田 昌岐 関西医科大学, 医学部, 准教授 (90466029)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己 / 他者 / 動作 / 社会文脈依存的情報表現 / 前頭葉内側皮質 / サル / 単一神経細胞活動記録 |
研究概要 |
自己および他者の動作情報の脳内表現が、行動環境を共有する他者の存在によってどのような動的変化を示すかを調べるため、マカクザルを用いた電気生理学的研究を実施した。2頭の被験動物を60センチの距離で相対させ、相手の動作の観察をもとに自身の動作を正しく企画・実行することを要求する行動課題を長期間(1年以上)訓練した。単一神経細胞活動記録法により、前頭葉内側皮質から神経細胞活動を記録した。まず、身体的他者の存在下に、自己の動作に応答する細胞(自己型細胞)、他者の動作に応答する細胞(他者型細胞)、そして自己の動作にも他者の動作にも応答する細胞(両者型細胞)を同定した。続いて、「他者」となる一方の動物を退室させ、記録対象となる被験動物のみが単独で課題を遂行する状況をつくり、細胞応答の変化を調べた。その結果、約67%の自己型細胞と両者型細胞において、それらが表現する自己動作関連活動の有意な変化を認めた。筋電図と運動反応時間の解析から、被験動物は、他者の存在に関わらず同様の運動出力を行っていることを確認した。さらに、約60%の他者型細胞と約67%の両者型細胞では、それらが表現する他者動作関連活動に有意な変化を認めなかった。すなわち、他者が実際には眼前に存在しないにもかかわらず、存在した場合に他者が動作を遂行したであろうタイミングで一過性の活動上昇を示した。前頭葉内側皮質の神経細胞が表現する自己動作関連活動には、自己の単なる運動出力のみならず、社会的環境特異的に自己動作の処理を担うものが存在することが示唆された。また、同領域の他者動作関連活動には、他者動作の想起やシミュレーションと関連するものが存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画にそって実験動物を適切に制御する行動パラダイムを確立し、電気生理学的実験を遂行した。そして、自他の動作情報表現の動的変化を捉えることに成功し、その成果について対外発表を行った。新たな行動パラダイムの開発については、次年度に行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の研究実施計画に従い本研究を推進していく。研究の遂行過程において、自己と他者の動作情報の脳内表現様式に個体間多様性が存在することを見出したため、それを説明する行動学的、電気生理学的、および遺伝学的要因を合わせて追究する。
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次年度の研究費の使用計画 |
新たな行動パラダイムの開発を次年度に行うこととしたため、それと関連する人件費支出を次年度に繰り越すこととした。 新たな行動パラダイムを考案する際に必要となるデバイスの開発や、そのプログラム制御等の研究補助に要する人件費を次年度に繰り越して執行する。この点を除けば、次年度は当初計画通りの使用が見込まれる。
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