研究課題
他者の動作に関する情報は,その背後に存在する他者の信念や意図を推測したり,特定の社会的状況において自己の動作を適切に決定したりする際に,重要な手がかりとなる。そのような他者の動作情報のモニタリングと利用は,ヒトの精神・神経疾患において,しばしば障害されることが知られている。我々は,これまで実施してきた霊長類動物に対する役割交替課題のトレーニングにおいて,他個体の動作情報を適切にモニタリングしたり利用したりすることができないサル個体を見出し,その行動解析,神経生理学的解析,そして遺伝学的解析を試みた。行動解析により,当該サルは自己の動作情報は適切にモニター・利用できること,ヒトパートナーに対して親和行動を示さないこと,そして常同症を呈することを明らかにした。神経生理学的解析により,正常個体では前頭葉内側皮質に多数認められる他者型細胞(他者の動作に選択的に応答する細胞)とミラー型細胞(他者の動作と自己の動作に同じように応答する細胞)が,当該個体では顕著に少なく,逆に,自己型細胞(自己の動作に選択的に応答する細胞)は正常個体と比べ有意に多いことを明らかにした。遺伝学的解析により,ヒトの精神疾患と発達障害のリスク遺伝子と考えられているセロトニン受容体関連遺伝子と脂質トランスポーター遺伝子に,他の100例以上のコントロール個体には認められない変異を同定した。このような知見は,ヒトの精神疾患や発達障害において出現する社会的認知機能異常の生理学的基盤と遺伝学的基盤を明らかにしていくうえで有用と考えられる。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Clinical Neuroscience
巻: 33 ページ: 147-150
生体の科学
巻: 66 ページ: 72-75
神経心理学
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Frontiers in Neuroscience
巻: 8 ページ: -
10.3389/fnins.2014.00362