研究課題
本年度は、神経系の性分化や性差について発達臨界期や成熟期におけるホルモンと受容体を中心に、分子から細胞、組織、個体行動レベルで研究を継続、展開した。ビスフェノールA (BPA)を生後3週目まで雄ラットに投与したところ、成熟期の海馬においてはエストロゲン受容体 (ER)のリン酸化と核への移行が有意に低下した。ERのアンタゴニストの投与によってこの変化が回復したことから、発達期の海馬におけるBPAはERのシグナル伝達系に作用し、成熟期での海馬に影響を与えることが明らかとなった。一方、エストロゲン関連受容体分子をサブタイプ別にその細胞内動態について検索した。蛍光消失後回復像(FRAP)によって3種類のサブタイプに特有のホルモン依存的な核内分布動態の違いを認め、さらに脳内においてもそれぞれ異なる分布様式を示していることを免疫細胞組織化学法によって確認した。雄のマウント刺激によって雌の性行動(ロードーシス)が誘発されるが、その制御回路について延髄と中脳中心灰白質との連結様相を確定した。雄刺激はcFos発現をマーカーにして解析し、中脳中心灰白質のとくに外側部にcFos陽性ニューロンが認められた。これらのニューロンは延髄網様体に投射し、グルタミン酸を伝達物質として用いていることをvGLUT2組織化学とトレーサー実験から証明した。エストロゲンと雌の痒み感覚機構について分子・形態・行動解析を進めた。感覚の一次ニューロンである後根神経節細胞はERを持ち、ガストリン放出ペプチド(GRP)を伝達物質にしており、性周期によって痒み感覚が変化することをセロトニンやヒスタミンの皮下投与擦過実験によって行動科学的に証明した。また、後根神経節細胞の軸索であるGRP含有線維が脊髄後角内で多数の入力シナプスを有し、特有の接触構造を持つことをSBF/SEMによる3Dイメージングシステムによって解明した。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (26件) (うち招待講演 3件)
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