研究課題/領域番号 |
24300130
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
井上 高良 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第六部, 室長 (20370984)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 発現制御 / ゲノム / 細胞・組織 / 発生・分化 / 大脳皮質 / 機能領野 / カドヘリン |
研究実績の概要 |
本研究は、生後間もないマウス大脳皮質特定層の接線方向に沿って他の遺伝子には認められない特徴的な発現様式を示すシナプス・細胞-細胞接着分子カドヘリンファミリーに着目し、それら発現が機能領野の境界形成・維持に対してどのような役割を果たし、どのような制御を受けているのかを探索することから、これまで殆ど不明であった大脳皮質機能領野個々(特にバレル領野)の発生に関わる細胞・分子機序の詳細に迫ることを主目的としている。 平成26年度においては、前年度までに樹立したカドヘリンサブクラスのひとつCdh6のバレル領野における発現様式を核移行型の緑色蛍光蛋白質(nlsEGFP)や大腸菌レポーター蛋白質(nlsLacZ)で再現する細菌人工染色体トランスジェニック(BAC-Tg)マウス系統の利点を用いて、皮質接線方向のバレルIV層ニューロン細胞体や視床由来軸索終末の配置様式の変化を明白にするとともに、バレルIV層ニューロンの細胞体や樹状突起の接線方向に沿った配向性がカドヘリンの発現バランスによって制御されていることを明らかにした。また、樹立したカドヘリンBAC-Tgバレル野から初代培養を調整し、そこへ神経活動を抑制するKir2.1遺伝子や亢進するcAMPを導入すると、レポーター発現様式が有意に変化することを見出した。これらの結果は大脳皮質におけるカドヘリン発現様式が神経細胞の活動によって微調整されることを起点としてバレル野に特徴的な組織構築様式が創り出されることを示す重要なものである。さらには、CRISPR/Cas9システムを用いた最新ゲノム編集技術の導入を試み、これに成功した。 以上の成果は、大脳皮質領野特異的な組織構築パターン表出に関わる原理の理解をさらに深める重要なものであるのと同時に、今後本研究目的を達成するにあたって確固たる解析基盤となることが見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度中に当初計画どおりのデータが蓄積されたのに加え、今後の研究の核となるCRISPR/Cas9システムの確立に成功したため。なお、平成26年度の成果はそれぞれ学会発表による一部公表を終えるとともに、英文原著論文として発表すべく専門誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
マウス大脳皮質バレル領野に限局したカドヘリン発現を制御するゲノム領域を絞り込む実験と新たに確立したCRISPR/Cas9システムによるマウスゲノムへの変異導入実験とを組み合わせることにより、本研究目的を多面的に完遂するのと同時に成果論文の受理をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文が受理された際に必要とされる掲載料を見込んでいたが、当該年度内の受理に至らなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
投稿論文掲載に必要な追加実験経費や掲載料に充てる予定である。
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