研究課題
本研究は、生後間もないマウス大脳皮質特定層の接線方向に沿って他には認められないユニークな発現様式を示すシナプス・細胞間接着分子カドヘリンに着目し、それら発現様式が機能領野の境界形成・維持にどのような役割を果たし、どのような制御を受けているのかを探索することから、これまでほとんど不明であった大脳皮質機能領野個々(特にバレル野)の発生に関わる細胞・分子機序の詳細に迫ることを主目的としている。平成27年度においては、バレル領野におけるカドヘリン発現バランスが精緻な構築様式に必要なこと、その発現様式の制御には神経入力依存的な活性が必要であることを確認し、成果論文として発表した(Egusa et al., 2016)。また独自に醸成した細菌人工染色体(BAC)を用いた方法論を応用することにより、カドヘリンの上流制御因子のひとつSOX10の病態モデル作出に成功し、成果論文として発表した(Ito et al., 2015 当該号表紙論文)。さらに国際共同研究により、転写因子複合体がゲノムと相互作用する領域を体系的にマップすることを可能とするSpDamID法の開発に成功し、成果論文を発表した(Hass et al., 2015)。以上の成果は、大脳皮質領野特異的な組織構築様式の表出に関わる細胞動態の理解を大きく深める重要なものであるのと同時に、今後複雑なカドヘリンの発現制御機構、ひいては大脳皮質領野個々の発生に関わる分子カスケードに迫る上で確固たる解析基盤となることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度中に本研究関連の成果論文が3報受理されるとともに、さらにカドヘリンの発現制御とヒト脳病態との連関を探った論文が投稿・査読中であるため。
マウス大脳皮質バレル領野に限局したカドヘリン発現を制御するゲノム領域をさらに絞り込むとともに、その上流で働く転写因子群の動作原理を本課題で確立に成功したCRISPR/Cas9システムやSpDamID法、さらには独自に醸成した条件付き子宮内電気穿孔法やBACトランスジェニックマウス作出法の利点を用いて明白にしてゆく予定である。また研究期間延長の要因となっている投稿論文1報の受理をめざす。
当該研究課題に関わる投稿論文が査読の過程にあるため。
投稿論文が最終的に受理されるにあたって必須となることが予測される様々な実験・解析を滞りなく行うために必要な物品費や人件費、およびその出版に関わる費用に使用する予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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