研究課題/領域番号 |
24300131
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
若林 孝一 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50240768)
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研究分担者 |
丹治 邦和 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10271800)
三木 康生 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30709142)
森 文秋 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60200383)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / パーキンソン病 / レビー小体 |
研究実績の概要 |
本年度は、p62の欠損がレビー小体病の病態に及ぼす影響を検証するため、レビー小体病モデルマウスおよびp62ノックアウトマウスを用いて病理学的、生化学的および行動学的検討を行った。 レビー小体病モデルとしてシヌクレイントランスジェニックマウス(Syn-TG)を用いた。p62ノックアウトマウス(p62-KO)と交配を行い、p62の欠損したSyn-TG(Syn-TG/p62-KO)を作製した。病理学的および生化学的検討にはHE染色、各種免疫染色に加え、ウェスタンブロット解析を行った。空間認知記憶を調べるためにモリス水迷路テストを、ストレス下での行動評価は強制水泳テストで行った。 ① p62-KOおよびSyn-TG/p62-KOではコントロールマウスに比べ加齢とともに体重が有意に増加した。② 病理組織学的にSyn-TGおよびSyn-TG/p62-KOではリン酸化シヌクレインの異常蓄積が認められたが、封入体の数はSyn-TG に比べSyn-TG/p62-KOで有意に多かった。③生化学的にSyn-TG に比べSyn-TG/p62-KOではTriton X-100に不溶性のリン酸化シヌクレインが増加していた。④ 行動学的にp62-KO およびSyn-TG/p62-KOではモリス水迷路テストでも強制水泳テストでも無動状態が長く続き、空間認知記憶の評価は困難であった。 今回の病理学的および生化学的解析から、p62が欠損するとレビー小体病モデルマウスにおける異常シヌクレイン蓄積の病態が増悪することが明らかにされた。さらに行動学的解析から、p62欠損では強制水泳テストにて無動状態を示し、ストレス下での意欲の低下など運動異常以外の要因が作用していると推測された。p62の機能不全や変異などがレビー小体病の病態に影響している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レビー小体病のモデル動物を用い、病態の悪化に影響を及ぼす因子を病理学的、生化学的および行動学的に解析することができた。p62の機能不全や変異などがレビー小体病の病態に影響している可能性が考えられる。この結果はレビー小体病の治療戦略を構築するうえで重要な知見であり、研究計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
われわれは、レビー小体病およびMSAでは細胞内のタンパク質分解系、特にオートファジーの機能障害が認められることを報告してきた。さらにMSAとALSのホルマリン固定パラフィン包埋組織(formalin-fixed paraffin-embedded tissue:FFPE)を用いたマイクロRNA (miRNA) 解析を世界に先駆けて進めてきた。その結果、両疾患において有意に変動している複数のmiRNAと標的分子候補(タンパク質)を見出した。MSAとレビー小体病では「シヌクレインの細胞内蓄積・凝集」という共通した病態を有することから、上記の標的分子候補はレビー小体病の病態にも関連している可能性が高い。そこで、miRNA解析によって得られた病態関連タンパク質のうち細胞内のタンパク質分解系、特にオートファジー関連分子に対する抗体を用い、レビー小体病の剖検脳組織を免疫組織化学的に解析する。さらに、レビー小体を形成する培養細胞モデルを用い、オートファジー関連分子のノックダウンおよび過剰発現が封入体の形成または分解に果たす役割を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりも試薬関係の予算が少なく済んだため676円を次年度に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
この予算は翌年度の研究費と合わせ物品費として使用する。
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