研究課題
1)OPTN遺伝子改変細胞を用いた治療候補薬のスクリーニング平成24年度の実験で樹立したsiRNAによるOPTNノックダウン細胞(Neuro2a細胞由来)において、mRNAの発現レベルを測定したところ、NF-κBのターゲット遺伝子であるp53、TNFαの遺伝子発現が有意に増加しており、BAX、Bcl21-1、MnSODの遺伝子発現が増加の傾向を示した。さらにこの細胞に対し、NF-κBの選択的阻害薬であるwithaferin Aを投与したところ、細胞死が有意に抑制された。以上の検討から、OPTNノックダウン細胞はNF-κBの過剰活性化によりアポトーシスによって死滅すること、この細胞死がwithaferin Aによって抑制されることが示され、withaferin AがALSの新たな治療薬となる可能性を見出した。2)OPTN遺伝子変異モデル動物の解析連携研究者である川上秀史教授らのグループで作製されたOPTNノックアウトマウスの神経組織を採取し、神経病理学的に解析したところ、運動神経の変性や大脳白質の脱髄所見が得られた。現在さらに免疫組織化学的に検討中である。3)SALS患者の剖検脳におけるOPTN関連蛋白の局在異常の検討われわれが新たに見出したVCP変異のあるALS症例の剖検脳でOPTNの染色性を確認したところ、脊髄前角細胞の細胞質でOPTNが凝集していることを発見した。これはOPTNが他の遺伝性ALSの病態にも広く関わっていることを示唆している。今後さらに孤発性ALS症例において検討を継続する。
1: 当初の計画以上に進展している
平成25年度の交付申請書の研究実施計画には、平成25年度と26年度の2年間にわたって行う実験計画を記載したが、これらのうち、1)OPTN遺伝子改変細胞を用いた治療候補薬のスクリーニング と4)OPTN遺伝子変異モデル動物における炎症性サイトカインの測定 はすでに終了し、2)OPTN遺伝子変異モデル動物の解析 と3)SALS患者の剖検脳におけるOPTN関連蛋白の局在異常の検討 はいずれも約40%が終了したため、平成25年度分としての達成度は140%である。
研究計画は現在のところ順調に進展しており、計画の変更や遂行上の課題はない。今後も研究計画に沿って実験を遂行していく予定である。
平成25年度の実験計画のうち、2) OPTN遺伝子変異モデル動物の作製に時間がかかり、当該年度内に十分な病理学的検索を行うことができなかったため、この研究費用分を次年度に繰り越した。その他の実験は順調に進行し、当初計画予算内で遂行可能であったため、平成24年度から25年度に繰り越された相当額も次年度へ繰り越した。最終年度である平成26年度は、上記のモデル動物の病理学的検索に繰越金を充当するとともに、これまで得られた研究成果に誤りがないか、再実験をくりかえすことによって検証する予定であり、繰越金はすべてこの検証実験に充当する予定である。
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