研究課題
最終年度である平成26年度は1)OPTN遺伝子変異モデル動物の解析と2)SALS患者の剖検脳におけるOPTN関連蛋白の局在異常の検討を行った。1)については、25年度に認められたOPTNノックアウトマウスの運動神経変性と脱髄変化は、ウィルス感染等の外的要因によるものと判明した。その後の多数マウスの観察では、病的な行動異常・病理学的変化は見出されていない。マウスではOPTNの機能喪失が他の蛋白によって代償されているのか、あるいは1年半の観察では短く、発症に至っていない可能性が考えられた。2)については25年度に解析したSALS症例に加え、さらに症例を追加して解析を行った。その結果、解析したすべてのSALS患者のTDP-43封入体にOPTNとNF-κB p65 subunitが病的に蓄積していることを見出した。この結果はSALSの病態にOPTN, NF-κBが関与していることを強く示唆している。また、25年度の検討において、VCP変異を伴うFALS患者の運動神経にTDP-43, OPTNの蓄積を認めたことから、変異VCP遺伝子を導入した培養細胞を検討したところ、TDP-43の細胞質への異常局在が再現された。この結果は変異VCPがTDP-43の局在異常に直接的に関与していることを示唆している。また、VCP変異FALS患者およびSALS患者におけるVCPの局在を検討したところ、いずれにおいても正常対照に比べてVCPが核に局在している頻度が増加していた。この結果から、VCPの機能異常がSALSの病態にも関与している可能性が示唆された。さらにわれわれは26年度に世界第3例目のOPTN変異FALS患者の剖検を得、病理学的に解析したところ、TDP-43に加えてタウとαシヌクレインが蓄積していることを見出した。この結果からOPTN変異によりオートファジーに異常が生じている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初計画4項目のうち、3項目は順調に進展し、有意義な成果が得られた。「OPTN遺伝子変異モデル動物の解析」については、OPTNノックアウトマウスの作製に成功し、1年余りにわたる行動観察と病理学的解析を行った。残念ながら現在までのところ病的な行動異常や特異的な病理学的変化が出現していないが、この理由として、マウスではOPTNの機能喪失が他のタンパクによって代償されているのか、あるいは観察期間が短く、いまだ発症に至っていない可能性が考えられた。一方、新規OPTN変異FALS患者の病理学的解析から、TDP-43に加えてタウとαシヌクレインも蓄積しているという予期せぬ新たな知見を得た。
当該研究は26年度が最終年度であるが、27年度以降も研究を継続し、これまで作製したOPTNノックアウトマウスをさらに長期間観察して、行動異常や病理学的変化が出現するか否かを検討する。また、マウス以外の動物を用いてOPTNノックアウトの効果を検討する。さらに、新規OPTN変異FALS患者においてタウ、αシヌクレインも蓄積していたことから、他のOPTN変異FALS患者およびSALS患者においても同様の蓄積があるかどうかを検討する。
研究期間内の観察では我々が作製したOPTNノックアウトマウスは病的な行動異常や病理学的変化を呈さなかった。その理由として観察期間が短かった可能性が考えられる。そこで、27年度も引き続いてこのマウスを観察し、行動異常出現の有無や病理学的変化の有無を継続して検討することとした。一方、マウス以外の動物を用いてOPTNノックアウトの効果を検討する必要もあると考えた。さらに、新規OPTN変異FALS患者においてタウ、αシヌクレインも蓄積していたことから、他のOPTN変異FALS患者およびSALS患者においても同様の蓄積があるかどうかを検討する必要が生じた。
繰越金はOPTNノックアウトマウスの病理学的検討、OPTNノックアウトメダカの行動観察・神経病理学的検討、OPTN変異FALS患者3例の剖検脳およびSALS患者剖検脳におけるタウ、αシヌクレインの蓄積の有無とその分布の検討、に充当する予定である。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (17件) 備考 (1件)
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http://www.wakayama-med.ac.jp/med/neurology/