研究課題
基盤研究(B)
Necdinによるニューロン生存の強化機構を明らかにするため、Necdinとその結合蛋白質の翻訳後修飾が細胞の生存や死に与える影響を検討した。蛋白質のリシン残基のユビキチン化やSUMO化は、蛋白質の安定化に関与することが知られている。そこで、Necdinが、自身と結合蛋白質のユビキチン化やSUMO化に及ぼす影響を調べた。低酸素条件下ではNecdin自身がユビキチン化されることで蛋白質分解を受け、Necdin量の減少が起こった。また、Necdin自身がSUMO化を受けることにより、細胞内局在や結合活性が変化した。さらに、Necdinはエネルギー代謝に関わる転写制御因子のユビキチン化を抑制したが、SUMO化関連酵素のユビキチン化は促進した。これらの結果、Necdin自身や結合蛋白質が翻訳後修飾を受けることによって細胞内局在や蛋白質量の変化が起こり、脳の発達異常や神経変性が防がれるものと推定される。次に、Necdin-like2の立体構造データに基づく相同性モデリングによってNecdinの立体構造を予測し、蛋白質相互作用に関わる疎水領域の複数のロイシン残基をアラニンに置換した変異体を作成した。数種類の変異体を作製して機能を調べたところ、p53結合活性をもつがp53依存性アポトーシスを抑制しないものや、p53結合能とp53依存性アポトーシス抑制能の両者を欠くものが見つかった。p53はニューロンの発生期に起こる細胞死や酸化ストレスによって誘導される細胞死を媒介することが知られているため、これらのNecdin変異体を用いることによってp53依存性ニューロン死の分子機構を明らかにできる可能性がある。
2: おおむね順調に進展している
予定した研究計画の中では、Necdinの蛋白質翻訳後修飾に及ぼす影響や、立体構造に基づく人工変異体の作製に関しては順調に進行した。一方、Necdinのニューロン変性へのin vivoでの影響に関しては、まだ予備的研究の段階である。
Necdinがエネルギー代謝に関わる転写制御因子の安定化を介してエネルギー代謝関連遺伝子の発現を増加させる可能性が見いだされたため、今後はその分子機構を明らかにする。また、Necdinの変異体に関しては、その機能を明らかにするため、種々のニューロンへの遺伝子導入によって酸化ストレス条件下でのニューロン変性への作用を検討する予定である。
平成24年度に行った研究においては、既に研究室で整備されている実験系を用いたため、新たな系を立ち上げる必要がなかった。平成25年度においては、in vitroとin vivoでの遺伝子導入によるニューロン変性の阻止作用を調べる予定である。これには、新規の実験系を立ち上げる必要があるため、次年度の研究費を合わせて研究を遂行する予定である。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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