研究課題/領域番号 |
24300134
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉川 和明 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (30094452)
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研究分担者 |
長谷川 孝一 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (20546783)
藤原 一志郎 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教 (80638495)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Necdin / ニューロン / ミトコンドリア / PGC-1α / ユビキチン化 / 転写因子 / 活性酸素種 / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
ニューロンの生存に重要な役割を果たすミトコンドリアの機能調節に及ぼすNecdinの機能を中心に研究した。Necdin遺伝子を欠損するマウス胎仔の大脳皮質ニューロンにおける遺伝子発現をマイクロアレイで調べたところ、ミトコンドリア関連遺伝子の発現量が有意に減少していた。Necdin遺伝子欠損胎仔の大脳皮質ニューロンではミトコンドリアのマーカー蛋白質の発現やミトコンドリアで合成されるATPの量も有意に減少していた。Necdin欠損ニューロンでは、ミトコンドリアの生合成に関わる転写因子のmRNA量に有意な減少がみられた。これらの転写因子の発現はミトコンドリアの機能活性の中核を担うPGC-1αによって制御されている。そこで、免疫沈降法にを用いてnecdinとPGC-1αの相互作用について検討した。その結果、necdinはPGC-1αに結合することにより、PGC-1αを安定化して蛋白質量を増加させることが分かった。PGC-1αはポリユビキチン化を受けてプロテアソームにより分解されるため、ユビキチン活性を免疫沈降法で調べたところ、necdinはPGC-1αのユビキチン化を強く阻害することが明らかとなった。さらに、PGC-1αは抗酸化作用をもつ遺伝子の発現を増加させて細胞の生存能を増強する可能性があるため、Necdin欠損ニューロンでの活性酸素種レベルを調べたとこころ、顕著に増加していることが明らかになった。以上の結果から、necdinはPGC-1αと結合して安定化することによって、ミトコンドリアの生合成や機能を促進し、ATPの合成量を増加させると同時に活性酸素種の発生を抑制することによってニューロンの生存能を促進することが分かった。これらの研究成果は、脳の発達障害や神経変性疾患の病因を明らかにする上で意義があるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた研究計画の中で、Necdinのニューロンのエネルギー代謝系に及ぼす影響を調べた結果、特にNecdinによるミトコンドア機能の制御を示唆する知見が得られた。この成果は神経発達異常や神経変性疾患の機構解明への研究に発展するものと予想される
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今後の研究の推進方策 |
Necdinの脳ニューロンのミトコンドリア生合成の機構と脳発達異常の成因との関連を遺伝子導入によって明らかにする。また、Necdinによるミトコンドリア合成の促進によるパーキンソン病などの神経変性疾患の発症と防御の分子機構を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年9月、樹立したアッセイ系を用いて化合物のスクリーニングを開始したところ、同一化合物でも結果が一定しないため、アッセイ系の信頼性を確認するための実験を追加する必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
アッセイ系の信頼性評価のための追加実験に必要な経費として、酵素・試薬類、実験用動物、実験器具類などの消耗品費の購入に当てる。
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