研究課題/領域番号 |
24300136
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
等 誠司 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (70300895)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | DNA脱メチル化 / ヒストン修飾 / Gcm遺伝子 / Rnf20遺伝子 / 神経幹細胞 |
研究概要 |
神経幹細胞は、発生期の脳においてまず指数関数的に増殖し、次いで大量の神経細胞を産生する。その後、胎生後期から生後にかけて、オリゴデンドロサイトやアストロサイトといったグリア細胞を順次産み出すことが知られる。また、成体脳においても脳室下層や海馬歯状回において神経幹細胞は維持されるが、その分子メカニズムには不明な点が多かった。本研究は、神経幹細胞の性質変化を司っているエピジェネティクスを解明するものである。これまでに、Glial cells missing(Gcm)遺伝子は神経幹細胞の発生期にHes5遺伝子プロモーターをDNA脱メチル化することを報告したが、その後の発生や成体脳における機能の解析は進んでいない。平成24年度は、胎仔脳にin utero electroporation法によってGcm7/2を強制発現させ、神経前駆細胞がGFAP強陽性になることを確認した。GFAP遺伝子のプロモーター領域にはleukemiainhibitoryfactor(LIF)シグナルを受け取るSTAT3結合領域があり、結合領域内とその周囲に存在するCpGがメチル化を受けることが知られている。そこで、in utero electroporation法によってGcm7/2を強制発現(同時にGFP発現ベクターも共発現させる)させた細胞をFACSによって回収し、GFAP遺伝子プロモーター領域のメチル化率を計測した。同様に、アストロサイト系譜細胞に特異的に発現するS100βやGLASTなどの遺伝子や、オリゴデンドロサイト系譜細胞に特異的に発現するPDGFRα,CNPaseなどの遺伝子についても、その発現調節にDNAメチル化/脱メチル化が関与しているかどうか検討を開始した。 一方、ヒストンH2BのE3ユビキチンリガーゼであるRing finger protein 20(Rnf20)については、in utero electroporation法によってRnf20やそのドミナントネガティブ体を強制発現させ、機能喪失や過剰発現の表現型を解析した。その結果、Rnf20のノックダウンによって神経前駆細胞の分化や細胞移動が抑制されることが判明した。また、ノックアウトマウスや神経細胞にRnf20を発現するトランスジェニックマウスの作製を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にノックアウトマウスが存在するGcm遺伝子の解析は予定通り進んでいる。Rnf20遺伝子のノックアウトやトランスジェニックマウスなどの遺伝子改変動物の作製は現在進行中である。従って、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Gcm遺伝子がGFAP遺伝子などのグリア細胞特異的遺伝子群の発現制御をしている分子メカニズムについて、グリア細胞特異的遺伝子群の発現誘導とプロモーター領域のDNAメチル化などを中心に、Gcm2遺伝子ノックアウトマウスを用いて解析する。また、Rnf20ノックアウトマウスや神経細胞特異的Rnf20発現トランスジェニックマウスの表現型およびヒストン修飾の網羅的解析を行う。
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