研究課題
神経幹細胞は、発生期の脳においてまず指数関数的に増殖し、次いで大量の神経細胞を産生する。その後、胎生後期から生後にかけて、オリゴデンドロサイトやアストロサイトといったグリア細胞を順次産み出すことが知られる。また、成体脳においても脳室下層や海馬歯状回において神経幹細胞は維持されるが、その分子メカニズムには不明な点が多かった。本研究は、神経幹細胞の性質変化を司っているエピジェネティクスを解明するものである。これまでに、Glial cells missing (Gcm)遺伝子が神経幹細胞の発生期にHes5遺伝子プロモーターをDNA脱メチル化することを報告し、平成24年度には胎仔脳にGcm1/2を強制発現させると神経前駆細胞がGFAP強陽性になることを確認した。平成25年度は、GFAP遺伝子発現に関与するエピゲノム修飾の解析を進めた。GFAP遺伝子のプロモーター領域にはleukemia inhibitory factor (LIF)シグナルを受け取るSTAT3結合領域があり、結合領域内とその周囲に存在するCpGがメチル化を受けることが知られる。そこで、in utero electroporation法によってGcm1/2 (+GFP) を強制発現させた細胞をFACSによって回収し、GFAP遺伝子プロモーター領域のメチル化率を計測した。また、次世代シーケンサーを用いて、reduced representation bisulfite sequencing 法による網羅的DNAメチル化サイトの解析にも着手した。一方、ヒストンH2BのE3ユビキチンリガーゼである Ring finger protein 20 (Rnf20)については、平成25年度までにノックアウトマウスや神経前駆細胞特異的にRnf20を発現するトランスジェニックマウスの作製を終了し、現在表現型の解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
Gcm1, Gcm2ノックアウトマウスを用いた、Gcm1/2遺伝子によるDNA脱メチル化の解析は予定通り進んでいる。Rnf20遺伝子についても、ノックアウトマウスや神経前駆細胞特異的にRnf20を発現するトランスジェニックマウスの作製を終了しており、本研究はおおむね順調に進展している。
Gcm遺伝子の過剰発現やノックアウトによって、ゲノム上のどのような部位が脱メチル化を受けるか(あるいは阻害されるか)、次世代シーケンサーを用いて、reduced representation bisulfite sequencing 法による網羅的DNAメチル化サイトの解析を予定している。Rnf20遺伝子については、ノックアウトマウスや神経前駆細胞特異的にRnf20を発現するトランスジェニックマウスの解析を行う。
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