研究課題
神経幹細胞は、発生期の脳において増殖や分化の性質を変化させることが知られるが、本研究は、神経幹細胞の性質変化を司っているエピジェネティクスを解明するものである。平成25年度までに、胎仔脳にGcm1/2遺伝子を強制発現させると神経前駆細胞がGFAP強陽性になることを見出したことから、GFAP遺伝子発現に関与するエピゲノム修飾の解析を進めた。GFAP遺伝子のプロモーター領域にはLIFシグナルを受け取るSTAT3結合領域があり、結合領域内とその周囲に存在するCpGがメチル化を受けることが知られる。そこで、子宮内電気穿孔法によってGcm1/2を強制発現させ、GFAP遺伝子プロモーター領域のメチル化率を計測したところ、Gcm1の強制発現ではメチル化率は変化なく、Gcm2の強制発現ではメチル化率が減少することが分かった。これらの結果から、Gcm1とGcm2が必ずしも同じ働きを共有するのではなく、別々の役割をもって協調的にGFAP遺伝子の発現を制御していると考えられた。一方、ヒストンH2BのE3ユビキチンリガーゼであるRnf20については、平成25年度までにノックアウトマウスの作製を終了し、さらにRnf20 KO ES細胞を樹立できたことから、平成26年度にはこれらノックアウト胚やES細胞の表現型の解析を行った。Rnf20 KOマウスは、胎生5.5日以降には観察されず、胎生早期致死(胎生3.5日~5.5日)であることが分かった。ノックアウトマウスでは神経発生を解析することは困難であったため、Rnf20 KO ES細胞を用いて神経(幹)細胞の誘導実験を行った。Rnf20 KO ES細胞は、野生型やRnf20 ヘテロES細胞と比べて細胞増殖が極めて悪く、また、神経幹細胞への誘導効率も非常に低かった。マイクロアレイ解析では、胎生初期に重要な働きをしている遺伝子群に発現異常が認められ、Rnf20がこれらの遺伝子発現に重要な働きを果たしていること、胚発生に必須の遺伝子であることが示唆された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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