研究課題/領域番号 |
24300138
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
星野 幹雄 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・病態生化学研究部, 部長 (70301273)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 神経系 / 神経系 / 転写因子 / 運命決定 / 変異マウス / 小脳 |
研究概要 |
異なる時期の神経幹細胞を異なる時期のマウス小脳に移植する我々の実験により、小脳原基には二種類の神経幹細胞プールがあることがわかった。一つはプルキンエ細胞(PJC)を生み出す幹細胞プールであり、もう一つはPax2陽性抑制性介在神経細胞(Pax2 IN)を生み出す幹細胞プールである。後者からは、移植の時期と場所によって、ゴルジ、星状、バスケット細胞が生み出される。 我々は、E12での発生途上の小脳原基のPtflaを発現する領域の中に、さらにOlig2およびGsh1という転写因子を発現するサブドメインがあることを見いだした。さらに、それぞれの遺伝子にGFPをノックインしたマウスを用いて、遺伝学的短期的リニエージ解析を行ったところ、Olig2陽性神経幹細胞からはプルキンエ細胞が、Gsh1陽性神経幹細胞からはPax2陽性介在神経細胞が選択的に生み出されるということを明らかにした。 また中期的リニエージ解析により、Olig2陽性の神経幹細胞が発生と共に次第にGsh1陽性の神経幹細胞へと形質を変えるということ、すなわち「プルキンエ細胞(PJC)産生神経幹細胞」から「Pax2 IN産生神経幹細胞」への「時間形質の遷移」が起こっていることを明らかにした。 また、Gsh1をPtfla領域全てで異所性に発現するトランスジェニックマウス(Neph3-Gsh1)において、プルキンエ細胞の産生が大きく減少しPax2 INの産生が増加すること、さらに子宮内エレクトロポレション法でOlig2を異所性に強制発現させるとPax2 INの産生が抑制されることを観察した。また、Olig1/2ダブルノックアウトマウスでは、プルキンエ細胞が激減し、Pax2 INが激増していた。以上から、Olig2およびGsh1がそれぞれ「PJC産生幹細胞」および「Pax2 IN産生幹細胞」の時間形質を決定していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小脳の抑制性神経細胞は複数種類あるが、それらが生み分けられるしくみについて、幹細胞の時間形質という視点からおおむね明らかにできたため。今後は興奮性神経細胞のそれぞれの種類がどのように生み出されるのかについても、明らかにしていく。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までで抑制性神経細胞系の解析はおおむね完了したので、本年度は興奮性神経細胞系の解析に重点をおいていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
一部の遺伝子改変マウスの完成が遅れた結果、平成24年度の動物飼育費用への支出が大幅に減少したため、次年度に繰り越した。その分、平成25年度の動物飼育費用がかなり増えることになると思われる。その他、そのマウスの解析のための、抗体、DNA関連試薬、などのために次年度の支出が見込まれる。
|