研究課題/領域番号 |
24300142
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
赤川 公朗 杏林大学, 医学部, 教授 (80129303)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シンタキシン1A / シンタキシン1B / シナプス伝達 / 機能分化 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
1.シンタキシン1Bノックアウト(以下1BKO)ではCa2^+非依存的な微小シナプス後電流の頻度は興奮性・抑制性のシナプス共に低下していた。高浸透圧刺激を用いてシナプス小胞のプールサイズを測定したところ有意に減少していた。またCa2^+依存的な誘発性シナプス後電流の波形や振幅に変化は認めないが、ペアドパルス比の上昇、頻回刺激時の応答の減衰パターンに変化がみられた。 2.1AKO及び1BKOのダブルノックアウトマウスより得た培養神経細胞系では、シナプス伝達が生ずるという予期しない結果が得られた。しかしその波形はシナプス小胞が刺激に同調して放出されるのではなく、非同期的なシナプス伝達となることが分かった。これは従来の"シナプス伝達にはシンタキシン1Aおよび1Bが必須である"という概念を変える重要な知見であった。 3.高カリウム刺激によるシナプトソームからの伝達物質の放出を検討した結果、1AKOではモノアミンの放出が低下したが、1BheteroではGABA、グルタミン酸の放出が低下しており、アミン系は正常であった。 4.1Bheteroでは脳切片からのモノアミン分泌は正常であったが、脳内微小還流法ではドーパミン分泌は増加し、セロトニン分泌は低下していた。これらの結果はこのマウス脳内ではモノアミンの分泌調節系に異常があることを示唆した。 5.1BKOに見られる培養神経細胞の生存低下はBDNFにより部分的に回復した。またneurotropin-3に若干の生存回復効果を認めたが、FGF、insulin、GDNFは無効であった。免疫組織化学的にはグリア細胞内にBDNFを含有したdense core vesicle様のdotを認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に行うべき実験系は順調に進捗している。特にシンタキシン1A及び1B遺伝子のダブルノックアウトマウスの神経細胞でもシナプス伝達が起きることが初めて示され、予期しない新しい知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な方針は変更がないが、既に行ってきたトランスジェニックマウスについての基礎的検討の結果、平成25年度に作成、繁殖させる予定のトランスジェニックマウス系の遺伝子発現効率が期待されたものよりかなり低いことが判明した。その為、従来から準備を進めてきた系を変更し、他の系に切り替える必要が生じた。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の計画がかなり順調に経過した為、試薬等の重複もなく、使用量がやや予定より少なめであった。しかし上に記したように従来、準備を進めてきた系に代わり別の系の遺伝子改変マウスに変更する可能性が考えられるので当初の予想より多くの試薬代等が必要となると予想され、それに用いる動物代、試薬代に充てる予定ある。
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