研究課題/領域番号 |
24300143
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
礒村 宜和 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (00415077)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経生理学 / ラット / 大脳皮質 / 運動野 / 神経細胞 |
研究概要 |
本研究は、目的と意思をもって行動を「実行する」あるいは「実行しない」ラットの大脳皮質運動野において、単一の錐体細胞や介在細胞が近傍の神経細胞に与える興奮性または抑制性インパクトを実測することを目指すものである。そのために、研究代表者が確立した行動学的手法と電気生理学的手法を発展させ、傍細胞記録によるナノ刺激法またはチャネルロドプシン2発現細胞への光刺激法を、マルチニューロン記録法と組み合わせる。実測した細胞間インパクトに基づき、運動発現に関わる錐体細胞と介在細胞の相互作用を示す機能的配線図を完成させて、行動の実行と非実行を担う皮質回路上の運動情報の形成と流れ方の仕組みを解明する。 平成25年度は、その前年度に実施した一次および二次運動野のマルチニューロン記録実験から得られた実験データを詳細に解析した。具体的には、頭部固定下で「前肢Go/No-go運動課題」を学習したラットが運動課題を遂行中に、一次または二次運動野に挿入した16チャンネルのシリコンプローブから多数の神経細胞の発火活動を同時に記録したところ、神経細胞の多くは前肢の動きや保持の際に機能的な発火活動が亢進することが確認できた。これらの一次運動野と二次運動野の神経細胞は、基本的発火特性は非常に類似していた。機能的な運動関連活動も、時間的経過、方向選択性ともに類似しており、両領域ともにNo-go行動に特異的に活動する細胞は存在しないことも明らかとなった。しかしながら、ほぼ同様の前肢運動であっても、行動上の状況が異なる場合には(報酬の獲得を目的とするオペラント的反応の場合と、飲水のためのコンシュマトリー(完了的)反応の場合)、特に二次運動野で機能的活動がより大きく修飾を受けることが判明した。 これらの研究所見は、中間報告として論文として投稿しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に実施した記録実験の解析結果を中心に、本研究の中間報告として研究論文をまとめて現在投稿中であるため、本研究計画はおおむね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の後半部分として、行動発現中の大脳皮質の神経回路内の細胞ペアにおける同期的発火などの機能的意義と機構について探っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のように、前年度と当年度は動物実験および実験データの解析がおおむね順調に進んだため、結果として実験に使用する試薬や電極材料などの消耗品類の購入数が想定よりも若干少なくなった。一方、次年度は次の段階の実験に進む予定であるため、その分の研究費が必要となる。そのため、研究費39,604円分は、有効に活用するために、年度末の「使い切り」とせずに次年度に使用することになった。 次年度の研究計画に沿って、次年度配分額と合わせて動物実験にかかる諸消耗品の購入などに使用する予定である。
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