研究課題
基盤研究(B)
申請書に記載したとおり、大型のグルタミン酸作動性シナプスである聴覚系のカリックス型シナプスを用いて、伝達物質放出機構の分子メカニズム、とくに短期シナプス可塑性を決定する律速段階の同定を目指す研究と、より小型の大脳、小脳などのシナプスでみられる短期シナプス可塑性の多様性を媒介する分子機構を調べる研究を遂行した。具体的には、前者では、(1)カリックスにおけるエンドサイトーシス関連タンパク質のうち、インターセクチン1がエンドサイトーシスではなく、むしろ伝達物質放出に関与するとの示唆を予備実験で得たので、ノックアウトマウスやSTED顕微鏡などを用いて分子の分布と機能との対応を明らかにした(論文印刷中)。(2)シナプス前終末タンパク質Munc13-1が、カルモジュリンと協同してシナプス短期可塑性にどのような役割を果たすかについて、ノックイン動物を用いて解析した(論文改訂中)。(3)また、カリックス型シナプスにおいて、カルシウムチャネルとエンドサイトーシス機構がどのように共在しているかについて検討した(論文準備中)。(4)シナプス前終末タンパク質の動態の可視化について準備的な研究をカリックス型シナプスで行った。後者に関しては、(5)小脳抑制性シナプスにおいて、シナプス伝達特性に関して、詳細な生理学的な解析をおこなった。(6)これに加えて、小脳において比較的小型の抑制性シナプス前終末からの直接の電気記録に成功し、興奮性シナプスのモデルであるカリックス型シナプスの特性と比較して、抑制性シナプスでどのような違いがあるかを調べる土台ができた。
1: 当初の計画以上に進展している
申請書に書いた内容は、予定通り実験を遂行し、さらに一部は論文投稿、改訂の段階まで来ているので、予定より早く進行している。また、カルシウムチャネルとエンドサイトーシスの関係、抑制性終末からの直接記録のように、予想外の発見、技術開発によって研究の着想が得られた。したがって、当初の計画を上回って研究が進んでいる。
申請書に書かれた内容にそって進捗しており、25年度も申請書に従った研究内容で問題ない。
24年度は消耗品などの使用を極力、工夫、節約したこと、論文掲載費用は25年度支払になったことにより、本事業の基金分に残額が生じた。研究室の活動の活発化、研究の予想以上の進展に伴い、25年度以降、主として多細胞、あるいは軸索、軸索終末からの同時多点記録のための装置整備、イメージングなどの光学的手法における蛍光プローブなどの消耗品の使用のため、本事業の経費が当初予定よりも増加する。これらの状況のもと、基金分、補助金双方、研究計画にそって適切に利用する。
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PNAS
巻: (印刷中)
10.1073/pnas.1219234110
巻: 109 ページ: 18138-43
10.1073/pnas.1209798109.
http://brainscience.doshisha.ac.jp/