研究課題
【本研究の意義と目的】超高齢化社会を迎え、完全房室ブロックや洞機能不全症候群などの徐脈性不整脈に罹患する患者は増加の一途をたどっている。その主たる原因は洞房結節や房室結節の変成・脱落である。これらの細胞は数万個の特殊心筋から構成されているだけであり、再生心筋による細胞治療の良いターゲットとなり得る。本研究では心臓洞房結節に特異的な転写因子を、線維芽細胞や固有心筋細胞に遺伝子導入し、洞房結節ペースメーカー細胞と同様の電気生理学的性質を持つ細胞へと再プログラミングすることをめざす。【本年度の研究実施内容と成果】昨年度、洞房結節ペースメーカー細胞の分子マーカーであるHCN4遺伝子座に可視化分子としてルシフェラーゼ・GFP融合遺伝子をノックインしたC57BL6マウスを作成することに成功した。そこで本年度は、このマウス全身の化学発光イメージング実験を行った。その結果、予想外の部位にHCN4が発現していることを新たに発見した。洞房結節については予想以上に強い発光シグナルを得ることができ、簡単にex vivoでペースメーカー領域を可視化できることを実証した。さらに胎児心筋を培養したところ、in vitroでも単一細胞レベルで簡単にペースメーカー細胞を可視化ができることを実証した。一方、GFPではHCN4発現領域と、他の背景自家蛍光とを区別することができなかった。すなわち本研究では、背景シグナルが皆無であるというルシフェラーゼの利点を十二分に生かし、革新的な発光イメージング実験の成果を上げることができた。次のステップとして、このマウスからiPS細胞を作成中である。本研究計画は一年間延長申請を行い、今後2年間をかけ、iPS細胞から心筋を分化誘導し、ルシフェラーゼ発光を指標としてHCN4発現量を定量的に測定しつつ、ペースメーカー型心筋を誘導する至適条件を検討していく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
発光イメージング実験において、当初の予想以上に簡単にHCN4発現細胞を可視化することに成功した。
Nanog-Puro-GFPトランスジェニックマウスとHCN4-Luciferase Knock-in mouseの交配を行い、ダブルトランスジェニックマウスを作出する。このマウスからiPS細胞を作成する。心筋細胞を分化誘導し、元の個体に細胞移植して、長期間生存するか、in vivoイメージングにより検討する。HCN4の発現量を上昇させる転写因子を同定できた場合には、その転写因子を過剰発現するトランスジェニックマウスを作成する。
HCN4-Luciferase Knock-in mouseの繁殖に予定外に時間がかかり、十分な数の実験動物が準備できなかったことと、2013年度に作成を行ったiPS細胞の質が不十分であり、再度iPS細胞を樹立する必要が発生した。このために必要な研究費を2014年度に研究費を繰り越すことになった。Nanog-Puro-GFP トランスジェニックマウスとHCN4-Luciferase Knock-in mouseを交配したダブルトランスジェニックマウスの胎児から線維芽細胞を培養する。この線維芽細胞からpuromycin耐性iPS細胞を再度樹立し、心筋分化誘導実験を開始する。HCN4の発現量を上昇させる転写因子を同定できた場合、それを過剰発現するトランスジェニックマウスを作成する。
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J Neurophysiol
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http://research.kurume-u.ac.jp/data.php?scode=73005632890988
http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/physiol2/paper.html