研究課題/領域番号 |
24300153
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 宗裕 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70177096)
|
研究分担者 |
明里 宏文 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (20294671)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ニホンザル / 血小板減少症 / SRV-4 / SRV-5 / 発症機序 / 感染実験 |
研究概要 |
近年、京都大学霊長類研究所と自然科学研究機構において、ニホンザルのみが特異的に発症する血小板減少症が流行している。霊長類研究所において本疾患が最初に観察されたのは2001 年のことで、以降現在まで43 頭が発症した。発症個体は、血小板が激減し、高い確率で死に至る。2010 年の論文発表時点(霊長類研究、26, 69-71)では原因は全く不明であったが、その後原因究明を進めた結果、本疾病はベータレトロウイルス(サルレトロウイルス4型:SRV-4)と深い関連を持つことが明らかになった。実際、このSRV-4の感染実験により病態を再現することに成功している。一方、自然科学研究機構で発生している同症は、SRV-5が原因であることが明らかとなってきた。 平成25年度は、SRV-4の感染性クローンを用いた感染実験を実施した。その結果、SRV-4感染性クローンを用いた感染実験においても、完全に血小板減少症の病態が再現された。このことから、SRV-4単独で血小板減少症を引き起こすことが明らかとなった。 霊長類研究所に保存してあるサンプルを検査することにより、SRV-4の伝播経路・侵入経路について、検討を行った。その結果、霊長類研究所にSRV-4を持ち込んだのはカニクイザルであること、SRV-4の伝播にはカニクイザルとニホンザルの無症候性キャリアが関与していることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H24年度までに、SRV-4については感染実験を実施し、ニホンザル血小板減少症の発症にSRV-4が深く関与していることを明らかにしていた。H25年度は、当初、SRV-5について、ニホンザルへの感染実験を実施する予定であったが、SRV-5の感染性クローンの作製に時間がかかったこと、SRV-4についての病原性を確定する必要があったことから、SRV-4感染性クローンのニホンザルへの感染実験を実施した。その結果、その結果、SRV-4感染性クローンを用いた感染実験においても、完全に血小板減少症の病態が再現された。このことから、SRV-4単独で血小板減少症を引き起こすことが明らかとなった。また、保存サンプルの検査を実施することにより、霊長類研究所にSRV-4を持ち込んだのはカニクイザルであること、SRV-4の伝播にはカニクイザルとニホンザルの無症候性キャリアが関与していることが明らかとなった。このように、研究はおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
H26年度は、SRV-5についての感染実験を実施し、SRV-4と同様の手法を用いて研究を進める。ウイルス学的検討項目として、①感染実験、②ウイルスの遺伝学的解析、③ウイルスの定量、④PCR、RT-PCRによるウイルス感染部位の確認、⑤内在性レトロウイルスの確認を実施する。また、病理学的検討項目としては、①発症個体と感染実験個体について病理学的再検討、②免疫染色によるウイルスの局在の確認を実施する。さらに、宿主要因として、①抗SRV抗体の中和活性の解析、②発症個体と非発症個体、非感染個体のMHCについて比較検討する。 SRV-4については、過去のサンプルについて、それぞれのウイルスRNAの塩基配列を決定し、変異と病態についての関連を調べる。 これらの実験から得られた結果とこれまでのの知見をまとめて、成果発表を行うとともに、論文にまとめて発表する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた、SRV-5についての感染実験を実施しなかったため。 今年度は、SRV-5に関する感染実験を、京都大学ウイルス研究所で実施する予定である。その際の、消耗品費、輸送に等で証する。また、実験サンプルの遺伝子解析のために雇用する非常勤職員の人件費にも使用する。
|