本研究は、見かけ上、長いスパンを持つ毛周期単位の繰り返し回数をカウントできる未知の皮膚時計機構があることを予想させる新規毛色変異体の遺伝的基盤を明らかにし、同時に当該変異体が示す多面発現の詳細な記載と、ヒトの関連疾病の発見(同定)を試み、当該モデル動物の基盤整備を行うことを目的とした。 本年度は昨年度に引き続きNZB系統との交配によるマイクロサテライトマーカーを用いた連鎖解析を継続した。その結果、当初約4 Mbあった候補領域を約1.7 Mbまで絞ることができた。一方で、コンソミック系統を用いるマッピングについては、マウスが代を重ねるとほとんど表現型の判別ができなくなったので、交配実験のみで、マッピングに進むことはできなかった。 NZB系統のマーカーも探索しながらの解析には、多大な時間を要するので、途中から、C57BL/6Nの全塩基配列情報が利用できることを利用して、当該変異系統との交配を開始し、得られた子孫マウスについてSNPサイトを利用したマッピングを行うことを計画し、実行に移した。幸いにも、数ラインで表現型をはっきりと弁別できる集団が得られ始めたので、解析を急いだが、年度内には最初のデータが得られる直前までしか進めることができなかった。結果的に、本研究の特徴である長い毛周期を研究対象とする困難さを痛感することとなった。 一方、独立して同時に継続していた組織化学的解析は、手法の改良も進み、皮膚の肥厚や皮膚付属物と毛周期ウェイブとの関係を始め、興味深い観察結果を蓄積することができ、我々の知る限りにおいて、これまでに報告のない表現型であることに確信を持つことができるようになった。またヒト疾患の報告についても、同一とみなされる表現型の記載にはまだ気づいていない。
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