研究課題
単層カーボンナノチューブ(SWNTs)は多数の成分(カイラリティ)の混合物であり、金属性成分と半導体性成分(semiconducting SWNTs, s-SWNTs)に大別される。s-SWNTsを精製し、単一カイラリティ成分からなるs-SWNTsを3種取得した。それぞれに近赤外光を照射すると、ある1つのカイラリティ成分は、近赤外光色素(インドシアニングリーン, ICG)に匹敵する活性酸素種(一重項酸素)産生効率を示すことがわかった。さらにこの成分の光安定性は、ICGのそれよりも顕著に高かった。一方、このカイラリティ成分の他の活性酸素種(スーパーオキシドアニオン)産生能は高くなかった。引き続き、スーパーオキシドアニオンを産生する他のカイラリティ成分を探索するとともに、表面修飾による活性増強についても検討する必要がある。金ナノロッドの分散剤としてHDLが機能することがわかり、金ナノロッドの細胞取り込みを既存の分散剤に比べて20倍以上増強することに成功した。変異型HDLを用いると、その取り込み増強度は80倍になった。また変異型HDLの脂質組成を調節すると、多量の金ナノロッドを細胞膜に毒性なく接着・滞留させることにも成功した。
2: おおむね順調に進展している
高い一重項酸素産生能を有するカイラリティ成分を安定して分取する方法を確立できた。HDLは金ナノロッドを細胞内、あるいは細胞膜表面に多量に毒性なく輸送できることがわかった。
スーパーオキシドアニオンとヒドロキシルラジカルを効率良く産生するs-SWNTsのカイラリティ成分を探索する。物理吸着を利用する表面修飾により、これらの産生能を増強できないか検討する。膜上の蛋白質の構造・機能をs-SWNTsおよび金ナノロッドの光線力学効果・温熱効果で制御できるか検討する。
消耗品類のための支出が予想したほど多くなかったため、次年度使用額が生じた。
次年度の実験計画を加速するため、当該次年度使用額を役立てたい。
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