研究概要 |
(1)超小型心肺補助システムの設計 急性期の重症心不全や重症呼吸不全症例の救命に用いられる現行の心肺補助システムは,人工肺,血液ポンプおよび回路チューブからなる血液回路を有しており,本研究ではこれらをコンパクトにホールインワン化することで,本システムのディスポーザブルユニットの草案とした.1次設計として,我々のグループで既に製品化している中空糸膜型人工肺BIOCUBEシリーズと現在製品化を進めている動圧軸受型の遠心ポンプからなる長期耐久性で実績のある要素デバイスからなる血液回路を採用したディスポーザブルユニット形状を設計した.人工肺および遠心ポンプは,血液回路のプライミング液充填時の気泡除去が容易となるように配置した.ポータブル使用時の独立したECMO駆動に必要なポンプ駆動装置×1個,バッテリー,電源システム,制御システムや,維持管理に重要な各種センサ群(血液流量計×2個,血液酸素飽和度センサ×2個,圧力センサ×4個,温度センサ×3個)を盛り込んだドライブユニットの仕様を策定した.一方,単独操作者によるポータブル使用が可能な筐体サイズ・重量の範囲内で,超小型心肺補助システムの草案を決定した.さらに,前述のディスポーザブルユニット,ドライブユニットおよびガスボンベユニットからなるモックモデルの試作を行うことができた.これに並行して,協力企業として参画したニプロ社と協力して,ドライブユニット内の電気的な設計についても進めた. (2)数値解析手法による補助用超小型人工肺の設計 数値解析手法を応用し,補助用途に関する設計パラメータに重点を置いた補助用超小型人工肺の設計を行なう。補助循環を想定した条件において,ガス交換部分の血液-ガス層間の物質移動解析を行い,ガス交換機能に基づいた設計方法を検討し得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超小型心肺補助システムの設計は,ディスポーザブルユニット内の各デバイス配置,ドライブユニット内のポンプモータ関連,センサ群等の仕様策定,これらにガスボンベも含めた全体形状および機構設計を計画通り進めることができた.さらに主要デバイスを組み込んだモックモデルの作成も行い得た.数値解析手法による補助用超小型人工肺の設計は,物質移動解析を用いたガス交換機能に基づく設計方法を検討し得た。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,人件費の予定額を要することなく,計画を十分に達成し得たため,当該助成金が生じた.次年度は,さらなる進捗の効率化を目指して,設計・解析に要する関連品,モックや要素機器の部分的な試作品等に積極的に費用を充てる予定である.
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