研究課題/領域番号 |
24300169
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 信人 北海道大学, 大学院・医学研究科, 講師 (80447044)
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研究分担者 |
安田 和則 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20166507)
グン 剣萍 北海道大学, 大学院・先端生命科学研究院, 教授 (20250417)
黒川 孝幸 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (40451439)
近藤 英司 北海道大学, 大学院・医学研究科, 講師 (60374724)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生体機能材料 / 再生医学 / 骨・軟骨代謝学 / 軟骨再生 |
研究概要 |
最先端ゲル創成技術を用いて薄い膜型PAMPS/PDMAAm DNゲルシートを開発し、最も薄いもので0.5mmの厚さのDNゲルシートの作成が可能となった。この技術により、厚さ0.5mm、1.0mm、5.0mmのDNゲルシートを作成し埋植用に直径4.5mmのインプラントを作成した。1.0mm以下の膜型DNゲルインプラントを安定的に関節内に移植するため5.0ナイロン糸を用いた圧着型移植法を開発した。これらの膜型DNゲルインプラントと手術技術を用いてその有効性について動物実験を行なった。実験には日本白色家兎38羽を使用した。30羽を無作為に先に述べた3種類の厚さのDNゲルをそれぞれ移植した群と何も移植をしないコントロール群の4群に分け、さらにそれぞれの群において関節面からの残存空隙が2.0、3.0、4.0mmの亜群に分けた。術後4週で安楽死させ組織学的に評価した。残りの8羽はリアルタイムPCRによる分子生物学的評価に用いた。肉眼的には深さ2.0mmの亜群において、DNゲルを移植した群ではコントロール群においてWayne scoreは有意に高かった(ゲル厚さ0.5mm : p=0.0016, 1.0mm : p<0.0001, 5.0mm : p<0.0001)。組織学的には深さ2.0mmの亜群において、DNゲルを移植した群ではコントロール群においてWayne scoreは有意に高く(ゲル厚さ0.5mm : p=0.0008, 1.0mm : P<0.0001, 5.0mm : P=0.0004)、深さ3.0mmの亜群においてもゲル厚さ1.0mmと5.0mmの群ではコントロール群より有意に高いスコアを示した(1.0mm : p=0.0063, 5.0mm : p=0.0046)。 リアルタイムPCRによる軟骨マーカー遺伝子(2型コラーゲン、アグリカン、Sox9)の解析では、ゲル厚さ1.0mmと5.0mmの群ではコントロール群より有意に高い発現(1.0mm : p=0.0059, 5.0mm : p=0.0411)を示したが0.5mmの群では有意差を認めなかった。この結果により、DNゲルは厚さに関係なく軟骨再生誘導能をin vivoで有していることが明らかとなったが0.5mmの厚さではその誘導能が減弱するため1.0mm程度が限界と考えられた。本研究が示した薄いインプラント材料の開発はDNゲルによる軟骨再生法の臨床応用への可能性を前進させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画による膜型DNゲルの開発と動物における移植法の確立、またその有効性と限界を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
軟骨治療における軟骨欠損の形態、大きさ、その存在部位は様々であり、ゲル技術による軟骨再生治療戦略の適応条件の決定は重要である。軟骨欠損範囲・存在部位がDNゲル誘導軟骨再生に与える効果を中動物・大動物で確認する。さらにこのDNゲルを用いた軟骨再生誘導法を最適化において、より良好な軟骨再生を再現性よく誘導するために治療の加速化を目指し、促進因子として期待されるヒアルロン酸やOP-1(BMP-7)などを適用しその有用性を検討する。
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