研究課題/領域番号 |
24300175
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
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研究分担者 |
岩崎 泰彦 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (90280990)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スマートバイオマテリアル / 高分子ゲル / 動的架橋 / 応答材料 / インテリジェント材料 / 刺激応答性 / DDS / センサー材料 |
研究概要 |
本研究では,革新的な医療システムを構築するためのスマートバイオマテリアルとして動的架橋構造を導入したソフトマテリアルを創成し,本年度は以下のような研究成果が得られた。 (i)動的架橋構造を導入したソフトマテリアルの創成:動的架橋点として糖鎖-レクチン複合体を導入した糖鎖応答性ゲルを合成した。またケイ皮酸ビニル(CVi)とポリジメチルシロキサン(PDMS)マクロモノマーとを共重合することにより,動的架橋点として光二量化基を有する光応答性ポリマー(PVCi-g-PDMS)を合成した。 (ii)生体分子応答性DDSの構築:複数の抗原抗体結合を動的架橋点として有する複数生体分子応答性ゲル膜を調製し,透過セルを用いてモデル薬物の透過実験を行った。その結果,複数の標的生体分子が存在する場合に薬物放出速度が急激に増加することがわかった。また新規な薬物キャリアとしてソープフリー乳化重合法により抗原抗体結合を架橋点として導入した抗原応答性ナノ粒子も合成した。その合成時にモデル薬物を存在させることにより,抗原応答性ナノ粒子内への薬物の内包も行った。 (iii)革新的ゲル診断システムの構築:革新的な診断システムを開発するため,生体分子応答性ゲル内に金ナノ粒子の分散を試みた。また,表面プラズモン共鳴(SPR)センサーのチップ上に,原子移動ラジカル重合(ATRP)法により抗体固定化ゲル薄膜を形成させた。SPRセンサーチップに抗体を直接固定化した場合に比較して,ゲル層内に3次元的に抗体を固定化した方がより大きなSPRシグナル変化を示すことが明らかとなった。 (iv)光応答性ポリマーによる表面パターニングシステムの構築:(i)で合成したPvci-g-PDMsからなるフィルムを作製し,フォトマスクを通した光照射により表面パターニングを試みた。その結果,フォトマスクの形状に応じてフィルム表面に明確な凹凸が形成された。さらに,光照射時間と表面形状変化との関係を明らかにし,表面パターニングの最適条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗原抗体結合や糖鎖-レクチン複合体を動的架橋点として導入したゲルの合成は順調に進んでいる。また,動的架橋点として光二量化基を有する光応答性ポリマーの合成にも成功し,フォトマスクを通した光照射によって表面パターニングも可能であることを示すことができたので,これらに関しては計画以上に進展している。一方,生体分子応答性ナノ粒子を合成し,その内部に薬物を内包させることもできた。したがって,今のところ研究は予定通り進み,ほぼ順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究によって糖鎖や抗原に応答する生体分子応答性ゲルやゲル微粒子,ゲル薄膜の調製,光応答性ポリマーの合成はある程度成功した。そこで平成24年度は生体分子応答性ナノ粒子に薬物を内包させた後に,その放出挙動について検討する。また新規な診断システムを構築するために,表面プラズモン共鳴(SPR)センサーチップ上に生体分子インプリントゲル層の形成も検討する予定である。光応答性ポリマーの表面パターニングにも成功したので,その表面での細胞培養も行う。一方,体積が変化する生体分子応答性ゲルだけではなく,液体状態から固体状態へと変化する生体分子応答性ゾル-ゲル相転移ポリマーの合成にも着手する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する予定の研究費は,主に生体分子応答性ゲルを合成するための試薬に使用すると共に,一部の研究成果を国際会議などで発表するための旅費としても使う予定である。また,予想よりも効率よく生体分子応答性ゲルを合成できるようになったので,最適な構造を有するゲルの合成条件を検討するために合成試薬や装置消耗品を購入する。特に,高価な生体分子やSPRセンサーチップの購入などを中心として消耗品として研究費を使用する予定である。また,一部ルーチン化できる実験には学生の補助などによって効率よく研究を進める予定であり,そのための謝金として使用する。さらに,研究成果を論文としてまとめて投稿するためにも研究費を使用する。なお,直接経費次年度使用額が80万円ほど残っているのは,当初の予定では合成方法を確立するために生体分子応答性ゲルを合成するための高価な生体分子を多量に購入する必要があると予想していたが,予定よりも早く合成に成功したためである。そこでこれらも合わせて次年度に予定している薬物放出実験などの実験回数を増やすために研究費として使用することを予定している。また,関連する国際会議での招待講演を依頼され,申請段階では予定に入っていなかった次年度の海外出張への旅費として使用することも考えている。
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