研究課題/領域番号 |
24300176
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
小林 尚俊 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (90354266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 角膜実質再生 / ナノファイバー / 角膜類似構造 |
研究概要 |
本年度も引き続き角膜全層の再生に対応するための要素技術である上皮再生、実質再生の足場研究の要素技術の改良を進めるとともに、本研究の基盤技術であるデスメ膜類似組織再生技術を作り上げるためのナノ-ミクロ足場材料の開発を中心に行った。角膜上皮のキャリア(基底膜材料)の候補として、配向絹フィブロインナノファイバーフィルムに関する検討を行った。角膜上皮を単独で播種した場合はナノ繊維の間隙に上皮の潜り込みが観察され、角膜上皮のバリア性を考慮すると最適な構造とはならなかった。そこで、配向絹フィブロインナノファイバーフィルムの裏側にあらかじめ角膜実質細胞を播種し、2週間培養を継続し、その後、上皮の播種を行いその状況を組織学的に検討を行った結果、ファイバー内への上皮の落ち込み現象が軽減され、最外層に上皮層の形成が認められた。免疫染色の手法を用いて、細胞の状態を検討した結果、角膜上皮は、増殖の指標であるPCNA(proliferating cell nuclear antigen)陽性細胞が多数観察されたのに対して、実質細胞は陰性となり、正常な角膜上で起こっている鎮静化した実質の上で角膜上皮がターンオーバーしている状況に類似した構造組織体の形成が起きていることを伺わせる所見を得た。また、角膜上皮では基底膜成分であるコラーゲンタイプ7およびラミニンの産生が確認され、実質細胞では、ビメンチン陽性、SMA‐α陰性、プロコラーゲン、クリスタリン陽性となり、それぞれ上皮、実質細胞とも良好な分化状態をとることが示された。デスメ膜様構造再生のためのナノファイバーのミクロ構造制御材料の構築に関しては、絹フィブロインの電界紡糸法に改良を加え、液体浴に対して紡糸を行う手法を取り入れることで、透明性を向上し、かつ、これまでより強度のあるフィブロインナノファイバー構造体の作製法を考案することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部予定を変更してin vitro の追加試験などを行ったが、2年目としては一定の知見が得られており、最終年度に向け概ね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において、ボーマン膜、デスメ膜の代替材料として絹フィブロインファイバーの有用性が示唆されたので、この結果を受け、次年度は最終年度でもあり、これまで研究してきたそれぞれの要素技術を利用して全層に対応できる高次構造形成に関する検討を行う。また、本年度進捗が得られなかった動物実験を進め中長期の安全性を担保できるデータどりを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、各パーツの機能を詳細にチェックすることに重きを置いたため、in vitroでの実験に終始し、当初計画していた動物実験を行わなかった。このため、人件費として確保した予算の一部を次年度に使用することとした。 次年度は、動物実験を進めるために、予算を用いて補助的な人員を確保し研究を加速する。特に、材料の中長期の安全性を担保できるデータどりを行う。
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