平成24年度と25年度に得られた結果に基づいて、鋳型PLGAメッシュを用いて間葉系幹細胞、関節軟骨細胞と線維芽細胞をそれぞれ培養し、脱細胞により間葉系幹細胞由来及び関節軟骨細胞由来と線維芽細胞由来のECM足場材料を作製した。得られた間葉系幹細胞由来、軟骨細胞由来のECM足場材料をそれぞれ用いて間葉系幹細胞を培養し、また線維芽細胞由来のECM足場材料を用いて線維芽細胞を培養した。そして、これらのECM足場材料による間葉系幹細胞と線維芽細胞の機能への影響および軟骨と真皮組織再生への影響を調べた。間葉系幹細胞は、間葉系幹細胞由来、および関節軟骨細胞由来のECM足場材料によく接着して増殖し、白色のペレット状組織を形成した。通常のペレット培養法で形成させたペレット組織と比較するために、組織の大きさやGAG含量、組織染色、遺伝子発現などを調べた。ECM足場材料で培養した細胞から作製したペレット組織のサイズ、GAG含量、乾燥重量は通常ペレット培養法で形成させたペレット組織の値を上回った。また、ECM足場材料での培養により得られたペレット組織は、通常の方法で形成させたペレット組織より、タイプIIコラーゲンと軟骨アグリカンの強い陽性染色を示した。さらに、タイプIIコラーゲン、アグリカン、タイプXコラーゲンとsox9の遺伝子発現量も通常法で形成させたペレット組織に比べ、高くなった。これらの結果より、ECM足場材料は間葉系幹細胞の軟骨分化と軟骨組織の形成を促進することが示唆された。また、ECM足場材料で培養した線維芽細胞は高い細胞活性を示し、培養とともに増殖し、細胞外マトリックスを産生した。組織染色より、線維芽細胞はECM足場材料に空間的に分布し、均一な厚みをもつ多層構造の真皮組織を形成することが分かった。以上より、開発したECM足場材料は軟骨や真皮組織の再生に有用であることが示された。
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