研究概要 |
平成24年度は,数値計算では超音波伝播の非線形を考慮したモデルを用いて水中集束超音波による音場を計算するコードを作成し,いくつかの計算を行った.超音波伝播の非線形性は,媒質の非線形パラメータであるB/Aを考慮することによって行い,数値解析手法は疑似スペクトル法を用い,境界にはPMLを設置した.コード開発はMatlab上で行い,作成したコードのPCでの計算速度を評価したところ,5000×5000点の軸対称音場の計算に1日程度を有すことがわかった.また,プログラムの精度検証として,焦点音圧振幅が5 MPa程度の条件において論文に発表されている結果との比較を行い,この圧力振幅では妥当な計算結果が得られていることがわかった.実験では,ファイバーオプティックハイドロフォンを購入し,これを用いて非常に強力な超音波の圧力分布を測定する実験系を構築した.正圧では50 MPa超,負圧で10 MPa超の圧力波を測定することに成功し,また,このような非常に大きな正圧,負圧を持つ集束超音波の焦点領域における音場を測定することができた.これによって,キャビテーション気泡群の発生,成長領域と超音波圧力分布を直接的に比較することができる実験環境が整った.さらに,このような非常に強力な超音波をアレイトランスデューサによって発生させ,生態模擬ゲル中に生じたキャビテーション気泡群の高速度撮影実験を行ってキャビテーション生成領域などを解析するとともに,生じたキャビテーション気泡群による加熱増強効果を,熱電対による温度測定によって評価する実験を行い,1箇所で発生させたキャビテーション気泡についての解析および手法の有効性の検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の計画通り,超音波伝播の非線形を考慮した音場計算コードを開発し,水中での集束超音波について数値計算を行うとともに,購入したファイバーオプティックハイドロフォンを用いた圧力測定を行った.また,そのような非常に強力な超音波をアレイトランスデューサ用いて発生させ,生じたキャビテーション気泡の高速度撮影実験,温度測定実験も行った.
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今後の研究の推進方策 |
数値計算では音場計算コードの機能拡張および温度場計算コードの開発を行い,数値計算結果と実験結果の比較によって数値計算の有効性を検討する.また,実験では数値計算との比較実験のほかに,4箇所でキャビテーション気泡を発生させる手法のパラメータについて調べ,加熱増強に効果的な超音波照射方法の開発を進める.
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