研究課題/領域番号 |
24300178
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉澤 晋 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30455802)
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研究分担者 |
梅村 晋一郎 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20402787)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超音波治療 / キャビテーション / 非線形超音波 |
研究概要 |
平成25年度は,数値計算では平成24年度に作成した非線形超音波伝播計算コードを用いて水中集束超音波音場を計算し,その計算結果と実験結果の比較を行った.比較対象の実験結果は平成24年度に購入したファイバーオプティックハイドロフォンを用いた計測結果とした.ピークピーク値で約10 MPaの焦点領域の圧力を比較し,計算と実験で良く一致した結果を得た.これによって,計算コードの有効性が確認された. キャビテーション気泡援用超音波加熱実験では,パルスレーザ光源の導入によって,気泡の振動状態までも解析可能な実験系を構築できた.本研究で主に用いている超音波の周波数は1 MHzであり,保有している高速度カメラの最小露光時間は1/4周期の250 nsであった.気泡はその振動の非線形性のために収縮時間が非常に短いため,これまで気泡の膨張収縮を捉えることは非常に困難であった.パルスレーザによって露光時間が1桁以上短くなったため,キャビテーション気泡の収縮を捉えることが可能となった.気泡の振動状態を解析することにより,気泡が超音波加熱増強に寄与しているかどうかを判別できるため,高速度撮影結果から超音波照射方法の有効性を評価できるようになってきている.また,超音波伝播方向に垂直な平面上の数点にキャビテーション気泡発生させ,鶏ささみ肉の加熱凝固体積について評価を行った.さらに,ゲルファントム中のキャビテーション気泡の発生領域に関する解析を高速度撮影によって行い,キャビテーション気泡生成領域と超音波焦点領域に相関は見られるがその中心位置が異なるケースが多いことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の計画通り,超音波伝播の非線形を考慮した音場計算コードによる集束超音波音場計算を行い,その結果と実験結果を比較した.実験データは,ファイバーオプティックハイドロフォンを用いて水中集束超音波の焦点領域の圧力を測定した.ファイバーオプティックハイドロフォンは非常に広帯域かつフラットな周波数特性を持っており,弱点であるS/Nの低さも十分な平均回数をとってカバーすることで,比較対象として好適な結果を得ることができる.その結果,非常に良い一致が見られ,開発コードの機能追加は必要であるが修正は必要ないと判断された.また,超音波伝播方向に垂直な平面上の数点にキャビテーション気泡を発生させる実験を行い,対象をゲルファントムとした際には高速度撮影を行うことでキャビテーション気泡発生領域を解析した.対象を鶏ささみ肉として同様の実験を行い,加熱凝固体積を測定することで加熱効率を評価し,提案手法の高効率性が確認できた.さらに,パルスレーザ光源の導入により,気泡の振動状態を解析可能な実験系を構築することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,先のパルスレーザ光源を用いた実験系による解析によって,キャビテーション気泡発生領域と気泡が超音波によって持続的に振動している領域と,超音波の焦点領域を短い露光時間でかつ長い時間スケールで解析することで,キャビテーション気泡の発生領域および状態に関してさらに詳細な解析を行う.その結果に応じてキャビテーション発生位置と加熱用超音波の焦点領域の位置を調整するなどしてより加熱効率の高い超音波照射方法の開発に繋げる.その際には,音場について数値計算も援用して適切な超音波照射方法を決定し,その結果から組織へのサーマルドーズを計算することで,組織加熱の均一性の高い超音波照射手法にする.キャビテーション気泡による熱発生の効率化と,音場設計による発生した熱の効率的な利用の両面からアプローチすることで,高い加熱効率を有した超音波照射方法を開発する.
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