スペックルトラッキング技術により、心エコー図法を用いた詳細な局所心筋運動の解析が可能になった。我々はこれまでに、虚血後に収縮運動がすみやかに回復した場合でも、微細な異常運動である収縮期後の心筋短縮運動(post-systolic shortening: PSS)がしばらく残存することで虚血メモリーイメージングが可能であることを報告してきた。しかし、これまでの検討は二次元(2D)画像で行われたもので、近年開発された三次元(3D)スペックルトラッキング法で虚血メモリー評価が可能であるかどうかは不明であった。 本研究は平成24年度に開始され、これまでに3D法においても微細な異常運動であるPSSの残存は確認でき、虚血メモリーの評価が可能であること、更に、その評価には左室の円周方向の動きの解析が優れていることを明らかにした。 一方、収縮早期の心筋伸展運動(early systolic lengthening: ESL)が虚血診断の新しい指標として有用であると近年報告され、このような背景から、3D法による虚血及び虚血メモリー診断法の確立には、各心筋ストレイン指標の診断精度を管理されたモデルで比較する必要があると考えられた。このため、最終年度は3D法により得られる各指標の虚血診断精度を検討した。 麻酔開胸犬を用い、左冠動脈回旋枝の血流をコントロール時より40-60%低下させた冠狭窄時において、3D解析から得られる様々な心筋ストレイン・ストレインレート指標の虚血診断精度をROC解析の曲線下面積(AUC)から算出した。その結果、PSSとESLの虚血診断精度は一般的な指標である収縮期最大ストレインより優れたAUCを示した。しかし、虚血再灌流モデルでの虚血メモリー診断においては、再灌流後にPSSが認められても、ESLの検出は困難な場合が多かった。 これらの結果から、3D法を用いた高精度虚血メモリーイメージングにはPSS指標を用いるべきであると考えられた。
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