生体へ投与した磁性ナノ粒子の循環・蓄積の分布を描出することにより、循環器疾患や悪性腫瘍の早期診断を可能とする“magnetic particle imaging(MPI)”が提案されている。MPIでは、磁場強度がほぼゼロとなる点(field free point:FFP)の周囲に磁性ナノ粒子が磁化飽和する磁場強度の分布を形成し、これを空間的にスキャンしながら磁化信号の高調波成分を検出することで、磁性ナノ粒子の分布を描出する。しかし、FFPを形成する磁場分布の傾斜が緩やかな場合には、FFP領域外の磁性ナノ粒子から生じる高調波成分が干渉信号となり、再構成画像上に画像ボケや偽像となって現れる問題があった。 本研究では、各点に配置した磁性ナノ粒子から得られる非線形な磁化特性(システム関数)の空間分布を予め算出しておき、これらと観測信号との相関情報に基づいて未知の磁性ナノ粒子の分布を高分解能に画像再構成することを目的としている。前年度までの数値解析により、従来の画像再構成に比べて約3倍の画像分解能が達成可能であることを確認している。また、1次元画像データを収集可能なプロトタイプシステム(傾斜磁場強度:1.65 T/m)を用いて、数値解析と同様の画像が再構成できることを示している。 平成26年度は、空間的な2次元画像データを収集可能とするために、新たなシステムを設計・製作し(マクセルペアコイル直径:400 mm、コイル間距離:150 mm、ソレノイドコイル直径:50 mm、ソレノイドコイル長:80 mm、受信コイルサイズ:10×25×25 mm、受信コイル巻数:500回)、X軸方向の傾斜磁場強度:2.3 T/m、Z軸方向の傾斜磁場強度1.1 T/mを形成することで、画像視野:30×30 mmのMPI画像を収集可能とした。
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