研究課題/領域番号 |
24300187
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
海老原 覚 東北大学, 大学病院, 講師 (90323013)
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研究分担者 |
上月 正博 東北大学, 医学系研究科, 教授 (70234698)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 咳衝動 / 呼吸困難 / 痛み / TRPV1 / TRPA1 / 医療費 / 予後 / 咳反射 |
研究概要 |
呼吸器疾患のリハビリの成否は呼吸困難、咳、痛みの三大主症状の制御にある。呼吸器疾患患者のリハビリにおいて咳嗽、呼吸困難と痛みの三つの症状が混在することはまれではない。しかしこの三つの症状おける相互作用はこれまで明らかにされてこなかった。そこで痛覚感受性に対する咳衝動(Urge-to-Cough:咳をしたい感覚)との影響を検討した。健常非喫煙者48人に対して咳衝動、呼吸困難感と痛覚感受性を測定した。痛覚感受性は温痛覚計を用い、クエン酸吸入時と吸気抵抗負荷時に、痛みの閾値と耐容能を評価した。咳衝動の増加を伴い、痛覚閾値が有意に増加し、耐容能も増加する傾向が示された。呼吸困難感の増加に従って、痛覚閾値が有意に上昇し、耐容能も上がる傾向が示された。咳衝動の増加に対する痛覚閾値の変化と呼吸困難に対する痛覚閾値の変化との間に有意な相関関係が認められた。健常人において咳衝動又は呼吸困難によって痛覚感受性が制御されたことを明らかにした。咳は最も頻度の高い臨床症状の一つであり、それに伴う呼吸感覚及び呼吸困難と痛みの相互作用を理解することが実臨床の場での主要症状から診断へ至る過程での重要な知見となると考えられる。以上のような主たる呼吸感覚モダリティーは呼吸困難感と咳衝動と考えられる。そこで地域在住高齢者479人において呼吸困難感と予後および医療費の関係を調べたところ、呼吸困難感感受性が低い高齢者ほど医療費が多くかかり、予後が悪いことが判明した。また、咳衝動についてはTRPVI刺激とTRPAI刺激による咳衝動の違いを調べたところ、TRPV1刺激による咳衝動は喫煙の影響を受けるのに対し、TRPA1刺激による咳衝動はそのようなことはないことが判明した。以上の治験は呼吸感覚モダリティー制御における重要な知見と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
呼吸器疾患における重要な兆候のうち、咳嗽と呼吸困難と痛みの相互関係についての新知見を見出した。この知見によりはの理学療法的な制御法をいくつか見出した。また呼吸困難感の高齢者の予後における意義と咳衝動の喫煙習慣における意義を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は理学療法による咳反射・咳衝動の抑制法を探索する。また、嗅覚刺激による咳反射・咳衝動の抑制法を探索する。そして、候補となった抑制法のエビデンスを固める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用が来は、当初予定していたマウス用咳解析装置によるマウス咳反射解析を次年度に延期することによって生じたものであり、延期したマウス用咳解析装置に必要な経費として、平成25年度請求額にあわせて使用する予定である。
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