研究課題
基盤研究(B)
はじめに、血流制限下の低強度筋力トレーニング(加圧トレーニング)が高齢者の筋サイズ、筋力、血管機能に及ぼす影響を検討した。健康な高齢者19名(平均年齢71歳)を加圧群9名と対照群10名(トレーニングなし)に分け、加圧群はレッグエクステンション(20% 1RM)とレッグプレス(30% 1RM)を週2回、12週間行った。血流制限には空圧式ベルトを用い、大腿基部に120~250mmHgの圧を加えた。トレーニング前後に大腿四頭筋、内転筋群、ハムストリングスと大臀筋の筋断面積(CSA、MRI法)、1RM、血流依存性血管拡張検査(FMD)、脈派伝播速度(CAVI)、足関節上腕血圧比(ABI)を測定した。大腿四頭筋、内転筋群と大臀筋CSAは、加圧群(4.4%~8.0%)では増加(p<0.05)したが、対照群では変化がなかった(-2.2%~-1.0%)。また、2種目の1RMは、加圧群(26.1%-33.4%)では増加(p<0.01)したが、対照群では変化がなかった(1.0%~5.2%)。一方、FMD、CAVIとABIは両群とも変化がなかった。加圧トレーニングは血管機能を維持しながら筋サイズと筋力を改善するため、リハビリ患者や低体力の高齢者に対して有用なトレーニングであることが判明した。ラット加圧モデルを作成して、以下の検討を実施した。臥床、廃用症候群、宇宙での無重力では高度筋萎縮をきたすことが知られている。この筋萎縮防止には筋力トレーニングが有用であるが、メカニカルストレス以外の筋刺激が筋蛋白合成系を刺激することが判明してきた。我々は、加圧除圧の血流制限による筋刺激の効果につき、ラット加圧モデルを用いて検討したので報告する。Wistarラット(11週、オス)を使用し、仰臥位麻酔下で、右大腿近位部に新生児用カフを用い反復血流制限(RBFR)を与え、以下の検討を行った。RBFRは、100mmHgとし、5分加圧、3分除圧を1セットとして6セット繰り返した。RBFR中の筋組織中の酸素分圧(PmO_2)の変化をphosphorescence quenching法により検討、さらに、RBFR直後、1-6時間後に左右の前脛骨筋をとりだしtotal RNA及びタンパク質を抽出し、mRNAの発現をreal-time RT-PCR法、蛋白発現、リン酸化をwestern blottingで検討した。コントロールとして、RBFRなしのラットを用いた。加圧中、PmO_2は著明に低下し、除圧中に回復した。RBFR 1時間後では、ribosomal S6 kinase 1(S6K1),ribosomal protein S6の有意なリン酸化の亢進を加圧脚で認めた。Akt,4E-BP1,AMPKα、ERK1/2のリン酸化、REDD1蛋白の有意な増加はみられなかった。Myostatin, atrogin-1, MuRF-1及びHIF1αmRNAの有意な変化は認めなかった。ラット加圧モデルにおいて、加圧除圧刺激のみでもmTOR系を活性化することが判明した。
2: おおむね順調に進展している
高齢者において加圧トレーニングは、安全に筋力増強、筋肥大をきたすことが証明された。さらに、ラット加圧モデルを確立して、加圧除圧刺激でも筋タンパク合成系であるmTOR系の活性化をみとめることが明らかとなった。現在、電気刺激による検討も進展している。
高齢者サルコペニアへの応用
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