研究課題/領域番号 |
24300191
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河上 敬介 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60195047)
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研究分担者 |
曽我 浩之 近大姫路大学, 看護学部, 教授 (20282121)
曽我部 正博 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10093428)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋損傷 / 機械刺激 / ラット / リハビリテーション |
研究概要 |
一般に筋損傷に対する理学療法は、安静、冷却を原則に行われる。しかし近年、これとは逆に、運動や温熱刺激が筋損傷の回復を促進させるという報告が出現した。これらの原則や報告が全て正しいとすると、安静-運動、冷却-温熱の様に相反する刺激の各々に、効果的な時期や期間、量等があると考える。しかし、これらを包括的に検証した報告はない。その原因には、(1)再現性のある筋損傷モデルがないこと、(2)回復の組織学的評価が定量的に行われていないこと、(3) 最新の筋再生科学に裏付けられた回復の総合的評価が行われていないことがあげられる。そこで、本研究の目的は、これらの原因を全て解決すると共に、臨床的に重要な筋力(生理学的現象)の回復を指標に加え、筋損傷に対する理学療法の効果的・効率的な治療戦略を確立することである。 H25年度は、H24年度に確立した小動物用足関節運動装置により、現実的な範疇で再現性のある損傷モデルを用いて、伸張刺激や超音波刺激、および冷却や温熱による回復促進効果を様々な条件で行い、主に組織学的、生理学的に検証した。たとえば、伸張刺激は① 筋損傷直後に1回のみ伸長刺激を実施する群、② 筋損傷3日後より20日後まで毎日伸長刺激を実施する群、③ 筋損傷 3日後より20日後まで1日おきに伸長刺激を実施する群、④ 筋損傷 1日後に1回のみ伸長刺激を実施する群を作製した。なお、伸張刺激はすべて3mN・m、15分間周期的な繰り返し伸長刺激(5秒間伸張刺激、5秒間負荷のない状態)を用いた。 その結果、どの刺激も筋損傷後伸張刺激を加えていない群に比べて組織学的、生理学的な回復が速い傾向が見られた。ただ、その中で、④ 筋損傷 1日後に1回のみ伸長刺激を実施する群は有意な回復促進効果が認められた。なお、冷却や温熱では有効な条件がつかめなかったが、超音波刺激では伸張刺激とほぼ同様の結果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自己点検の理由は、まずこれまでに不明であった、筋損傷に対する理学療法的介入の内、伸長刺激や超音波刺激が、筋損傷からの回復促進に有効であることが、生理学的、組織学的に明らかになった。また、次年度行う予定であった、効果的な刺激の頻度や時期も判明してきており予定以上に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
伸張刺激による筋損傷からの回復促進効果に関する研究に関しては、H25年度に組織学的検証、生理学的検証により明らかになってきた条件で伸張刺激を与え、生化学的に検証する。生化学的評価は,Western blot法により筋分化調節因子であるMyoDおよびmyogeninの発現量の経時的変化(筋損傷12,24,48,72,96,120時間後)を測定により行う。 また、必要であれば、RT-PCRを用いて、MyoD とmyogeninのmRNAの発現量の変化も検証する。また、超音波刺激においても同様に、H25年度に組織学的検証、生理学的検証により明らかになってきた条件で伸張刺激を与えた後の生化学的検証を行う。なお、H25年度に有効な条件が確定できなかった冷却や温熱では、再度条件の確認を行うが、進行状況によっては、実験を取りやめ、伸張刺激や超音波刺激による筋損傷からの回復促進効果のメカニズム解明に関して掘り下げて実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費に次年度使用額が生じたのは、電気生理学的検証と組織学的検証の正確性を追求するのに時間を要し、生化学的検証に関しての進行が予定に比べ進まなかったからである。よって、生化学的検証で必要であった、抗体・薬品等の消耗品の購入を先送りしたために次年度使用額が生じた。 繰越金は、当初計画していた生化学的検証のために使用する。具体的には、MyoD抗体(85千円)やMyogenin抗体(50千円)等200千円、試薬等162千円、計362千円
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