研究課題
本研究代表者らは、脳卒中患者のADLを阻害する屈曲拘縮の改善に着目して、患側一次運動野(M1)への5Hz反復TMSと患側伸展筋群の反復運動を組み合わせ(ハイブリッド・リハビリ)、患側M1の特定の運動機能(手首関節の伸展)を選択的に改善する手法を考案した(Koganemaru, Mima et al., Brain 2010)。この研究を発展させ、機能的MRIで運動機能改善に至る脳内機構を解明し、脳可塑性が(1)患側M1局所で生じているのか、(2)患側M1を含む脳内ネットワークの変化としても生じているのか、という問題を解決するために本研究を行った。脳卒中患者11名を対象として、すでに報告した方法にしたがって、患側M1に5Hz反復経皮的磁気刺激と手首の反復伸展運動を組み合わせたハイブリッド・リハビリを15分間行った。介入前後で機能的MRIを用いて、手指伸展・屈曲運動に関わる脳領域を記録し、神経可塑性と機能回復により、活性化する脳領域の変化を検討した。3TのMRI(現有設備)を用いた脳機能検査は、介入前、6週間の介入直後、介入2週間後に行った。その結果、すでに報告したとおり(Koganemaru, Mima et al., Neurosci Res, 2015)、介入を行った運動である手指伸展運動については、それに関連した脳賦活が、患側一次感覚運動野、健側の帯状回運動野、運動前野で減少しており、これは運動機能改善と関連すると考えられた。いっぽう、リハビリ介入を行わなかった屈曲運動の脳内表現については介入前後での違いは認められなかった。本研究の結果は、たんに刺激部位である患側一次運動野だけでなく、脳全体の運動機能ネットワークでの可塑性が生じることで臨床的改善が生まれることを示しており、今後の神経科学に基づいた科学的リハビリを創出する上で有用な治験である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuroscience Research
巻: 92 ページ: 29-38
10.1016/j.neures.2014.10.004
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