研究課題/領域番号 |
24300193
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
沖田 実 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50244091)
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研究分担者 |
中野 治郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (20380834)
坂本 淳哉 長崎大学, 大学病院, 理学療法士 (20584080)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 組織損傷 / 不活動 / 慢性痛 / 動物モデル / 他動運動 / 治療介入 / 痛覚閾値 / 抗炎症性サイトカイン |
研究概要 |
先行研究やこれまでの予備実験の結果から、不活動によって惹起される筋痛には神経成長因子(NGF)の発現が強く関与する可能性が示唆されており、今年度はまずこの点を明らかにすることを目的に以下の実験を行った。具体的には、正常な骨格筋にNGFを投与するだけで筋痛が発生するのか、また、不活動によって惹起された筋痛がNGF拮抗薬の投与で軽減するのかといった仮説をラットを用いた動物実験で検証した。結果、いずれの仮説も支持する結果が得られ、不活動によって惹起される筋痛の発生メカニズムのキーとなる標的分子はNGFと予想された。 次に、今年度は組織損傷由来の慢性痛の動物モデルに対する運動療法の早期介入効果を検証した実験も行った。ラットの一側膝関節に起炎剤を投与することで関節炎を発症させ、その後、膝関節の他動運動による治療介入を行う群(治療群)、治療介入を行わない群(非治療群)、膝関節の自発的な運動さえも制限するため後肢をギプス固定した群(不活動群)を設け、患部や遠隔部の痛覚閾値の推移、IL-6やIL-10といった抗炎症性サイトカインの骨格筋含有量ならびに関節組織の病理変化などを比較した。結果、治療群は患部のみならず遠隔部の痛覚閾値の低下が早期に改善し、組織損傷由来の慢性痛は関節の他動運動といった運動療法の早期介入によって予防できる可能性が示唆された。また、関節の他動運動によって関節組織の病理変化を助長することはなく、これは副作用が少ないことを示唆している。ただ、このような効果のメカニズムに関与しているのではないかと仮説していた抗炎症性サイトカインの動態には変化は認められず、今後は他の分子の動態を検索し、メカニズム解明につなげたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は不活動由来の痛みの末梢機構として、これまで課題となっていた骨格筋の関与について検索を進め、前述したように骨格筋で発現するNGFが不活動由来の筋痛発生の標的分子であることをつきとめた。この点の成果については非常に満足している。一方、組織損傷由来の慢性痛の発生予防の視点に立った運動療法の早期介入効果の検証実験に関しても概ね当初の仮説を支持する結果が得られ、満足している。ただ、時間的な問題もあり、当初予定していた脊髄組織の検索や他の生体分子の検索が十分に進まず、運動療法の介入効果のメカニズム解明までには至らず、これらのことから今年度の達成度は「(2)おおむね順調に進展している。」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように課題となっている点に関しては、試料採取までは終了しており、次年度の上半期までに順次解析を進め、結論を得たいと考えている。そして、次年度は不活動由来の慢性痛の発生予防の視点に立った治療介入研究を動物実験モデルでシミュレーションし、その効果検証実験を行う。加えて、次年度の下半期では本研究課題の総括を行い、慢性痛に対する理学療法の生物学的効果の基礎データを提示する予定である。
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