研究概要 |
本研究では,高齢者の起立不全の予防を目的とし,高齢者の感覚器へのフィードバックを付与することで,転倒などの不安から生じる心理的障壁を克服できるシステムを構築する. 高齢者の多くは,自身で無意識に身体能力を制限してしまい(心理的障壁),それが身体機能改善の障害となっている.そこで本研究では,起立時の状態を実時間で計測し,目標の状態との差を視覚・触覚・聴覚へ感覚刺激としてフィードバックするシステムを構築し,システムを繰り返し使用する際に,高齢者に気づかれない範囲で徐々に目標状態を最適な動作に漸近させ,高齢者の動作を誘導し,自然に心理的障壁を克服できるシステムを構築することを目的とする.システムの有効性の検証では,高齢者を対象にQuality of Life(QoL)の変化の追跡調査を行い,医学的な有用性を調べることを目指す. 平成24年度は,起立動作時の身体情報を計測する装置を実装し実時間で各感覚器にフィードバックを行うことができるシステムを構築し,実験系の基本設計および試作を行った. また,アシスト装置開発のための股関節角度の最小可知差異の測定手法を構築し,股関節角度の最小可知差異を計測した. 歩行時の解析については,膝関節靭帯付着位置と歩容が膝関節靭帯張力に与える影響について,シミュレーションにより調査を行った. 更に,筋骨格モデルを用いた健常若年者の起立動作のシナジー解析を行った.その結果,起立動作における重要な4つのシナジーが抽出され,それぞれが関節に与える影響を算出した.
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